デジタル田園都市国家構想交付金とは?

岸田内閣が掲げる成長戦略「新しい資本主義」の重要な柱の1つである「デジタル田園都市国家構想」。
地方からデジタルの実装を進めることで新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくというこの構想の実現に向けた動きが各地で始まっています。
この「デジタル田園都市国家構想」の実現による地方の社会課題解決や魅力向上の取組を深化・加速化する観点から、「デジタル田園都市国家構想交付金」を設立しました。しかし、これらのワードを聞いたことはあるけども、制度をよく理解しきれていないという方や、自治体へ向けたサービス展開の方法を模索されているという方はいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、同構想の基本をおさらいするとともに、デジタル実装タイプの概要について解説します。
デジタル田園都市国家構想とは?
デジタル田園都市国家構想とは、「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」という、政府が目指す持続可能な経済社会への基本方針のことです。
デジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方の社会課題解決、魅力向上を実現し、地方活性化を加速することを目的としています。
具体的な取り組み
社会課題の解決や魅力向上を図るため、下記の5つに重点をおきつつ、分野横断的な支援を通じて地方の取組を推進します。
① 地方に仕事をつくる
② 人の流れをつくる
③ 結婚・出産・子育ての希望を叶える
④ 魅力的な地域をつくる
⑤ 地域の特色を活かして分野横断的に支援する
これらの課題を解決することで、自治体は、地方の魅力向上のブレークスルーを実現し、地域活性化を加速させることが「地方と都市の差を縮めていく」ための足がかりとなります。また、地方での新産業や雇用機会の創出が促されることによる人口拡大も期待しています。
デジタル田園都市国家構想交付金の概要
デジタル田園都市国家構想の実現、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力を向上させるための自治体の取り組みを、国が支援しますよ、というのがデジタル田園都市国家構想交付金です。国はデジタルを活用して地域の課題解決に取り組む自治体の数を2024年度末までに1,000団体に展開する計画を行っています。
本交付金は、大きく2種類に分かれます。地方創生拠点整備タイプとデジタル実装タイプです。

地方創生拠点整備タイプは、各自治体が自主的・主体的かつ先導的な事業を支援するというもので、自治体ごとに定めている地方版総合戦略という計画にのっとった取り組みや、施設整備等を支援するものです。地方創生推進交付金は、取り組みや事業など、いわゆるソフトと呼ばれるもの、地方創生拠点整備交付金は、施設整備等、いわゆるハードと呼ばれるものが対象となります
デジタル実装タイプは、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けた取り組みを行う自治体に対して、自治体が事業の立ち上げに必要な単年度のハード/ソフト経費を支援する交付金です。
地方創生拠点整備タイプよりもデジタル実装タイプの採択数が多いため、デジタル実装タイプを詳しく解説していきます。
デジタル実装タイプとは?
デジタル実装タイプはさらに5つに分岐します。
- 地方創生テレワーク型
- TYPE1.優良モデル導入支援型
- TYPE2.データ連携基盤活用型
- TYPE3.マイナンバー高度利用型
- マイナンバー利用横展開事例創出型
地方創生テレワーク型
「転職なき移住」を実現し、地方への新たなひとの流れを創出するため、サテライトオフィスの整備・利用促進等に取り組む自治体を支援する交付金です。自治体や民間企業の新規サテライトオフィス開設や、既存施設の拡充、地方への企業誘致などの取り組みを支援するような内容となっております。
<主な採択事例>
〇 サテライトオフィス等整備事業(自治体運営施設整備等)
〇 サテライトオフィス等開設支援事業(民間運営施設開設支援等)
〇 サテライトオフィス等活用促進事業(既存施設拡充促進)
〇 進出支援事業(利用企業助成)
〇 進出企業定着・地域活性化支援事業
新規施設を開設だけでなく、既存施設の利用促進のプロモーションやテレワーク関連設備の導入、オンライン会議用ブース導入等にかかる経費も、自治体が活用できる交付金の対象に入っておりますので、PR動画や、テレワーク関連のハードの提供をされている企業にとってはサービス拡大のチャンスではないでしょうか。
TYPE1~3+マイナンバー利用横展開事例創出型
TYPE1~3およびマイナンバー利用横展開事例創出型は、1自治体あたり、9事業または5事業と、各自治体が交付金を申請できる上限数が定められています。この申請上限数は、4つの型の合計数での上限となります。
福岡県で例えると、同一年度内に、福岡県がTYPE1で9事業申請、TYPE2でも9事業申請はできないということです。また、マイナンバー利用横展開事例創出型が新しく創設されております。内閣府によると、令和4年度第2次補正予算に限った時限措置となるため、令和5年度以降は申請不可の可能性はあります。

交付対象の要件として、自治体内の職員の業務効率化に止まることなく、地域に成果が及ぶものであることが交付対象となる条件となります。
そのため、自治体の庁内での業務効率化だけを目的とした事業は、本交付金の対象外となります。
例えば、手書きで行っている窓口手続きをオンライン化できるサービスは、自治体職員の業務効率化だけでなく、住民の利便性が向上するため、交付の対象となります。要は、地域住民などが利益を受けられるかどうか、というのが本交付金の対象になるか否か、の判断軸となります。
TYPE1 優良モデル導入支援型 【国費1億円・補助率1/2】
ほかの地域等ですでに確立されている優良なモデル・サービスを活用して、迅速に横展開する事業です。TYPE1が最も自由度が高く、企業が活用しやすい交付金となります。
<主な採択事例>
〇 書かない窓口
〇 AIオンデマンド交通
〇 公共施設予約システム
〇 スマート農業
〇 AIチャットボット
〇 ドローン点検整備
地域での活用の事例がすでにあり、横展開がしやすいサービスなどは、TYPE1の交付金を活用してサービス展開ができます。補助率が1/2なので自治体もサービス導入に至りやすい事業なのではないかと考えます。
TYPE2 データ連携基盤活用型 【国費2億円・補助率1/2】
オープンなデータ連携基盤を活用し、複数のサービス実装により地域住民等のWell-Being、つまり住民の満足度や幸福度などの向上を図る、モデルケースとなり得る取り組みを支援するものです。
Well-Beingとは?
デジタル田園都市国家構想には、適切な目標(KPI)と実現を目指すビジョンを特定・共有することを求められおり、このKPIとビジョンの特定・共有のための評価基準として設けられた指標です。簡単に言い換えると、暮らしやすさを実現することの先に、市民の幸福感があるという考えのもとに生まれた指標のことです。
現状のまちづくり事業において、包括した目的や価値観の明示が不十分であることや、事業ごとのKPIが独自に設定されていることで一つのまちづくりに共通のゴールが設定されにくいという問題を解消する目的があります。また、多様な生活ニーズや価値観に寄り添うまちづくりをデジタル技術によって実現するには、複数のサービス間で協力・連携して共助のビジネスモデルを確立することが必要であるため、この指標が設けられました。
自治体ごとにデータ連携基盤を構築し、それらを活用して複数のサービス提供者が異なるサービスを提供していくものが対象となります。地理データや空間データ、公共データをはじめとする様々なデータを、一つのデータ連携基盤で連携させ、そのデータを活用し、様々なサービスの活用に繋がる事業が対象となります。
<採択条件>
〇 マイナンバーカードの交付率が全国平均以上
ちなみに、TYPE1の令和3年度の採択事業数は705件に対し、TYPE2・3合わせて、全国27件しか採択の実績がありません。TYPE1と比較すると難易度の高い事業であることが伺えます。
TYPE3 マイナンバーカード高度利用型 【国費6億円・補助率2/3】
令和4年度から新しくリニューアルされた採択事業です。データ連携基盤を活用した上で、新規性の高いマイナンバーカードの用途開拓に資する取り組みが該当します。
<採択条件>
〇 マイナンバーカードの交付率が全国平均以上であることが申請要件
〇 新規性の高いマイナンバーカードの用途開拓がされているか
〇 マイナンバーカード利用の先行事例としての横展開モデル性があるか
TYPE2と同様、TYPE1と比較すると難易度の高い事業になります。
TYPEX マイナンバーカード利用横展開事例創出型 【国費3億円・補助率10/10】
マイナンバーカードの普及率が高い団体において、普及率が高いからこそ実施するメリットの大きい取り組みを実施し、全国への横展開モデルとなるマイナンバーカード利用の先行事例を作ることを目的に設置された事業です。
<採択条件>
〇 マイナンバーカードの申請率7割以上
〇 マイナンバーカード1枚で様々な市役所サービスが受けられるようにする
「市民カード化」構想の取り組みなどを想定
補助率10/10と国が全額負担する事業なので、マイナンバーカードを活用したサービスを提供している企業は狙い目の事業であるでしょう。
まとめ
各取り組みの解説をしましたが、今狙いやすいのは「TYPE1」ではないでしょうか。
また、デジタル田園都市国家構想交付金は令和5年、さらに予算拡大される見通しです。令和3年度は、デジタル実装タイプだけで200億円の予算が計上され、令和4年度には倍額の400億円が計上されています。令和5年度概算要求にて、地方創生拠点整備タイプとデジタル実装タイプを合わせて、1200億円もの予算が要求されており、デジタル実装タイプだけで、その半分の600億円の予算が計上される可能性があります。該当事業やサービスを持っている企業は、今後の動きに注目していきましょう。
なお、株式会社ジチタイワークスでは、ヒントとアイデアを集める行政マガジンというコンセプトのもと、1,788自治体・全課を対象に2カ月に一度のペースで「ジチタイワークス」を発行しています。ほかにも、自治体職員向けセミナーやDM発送代行など、自治体向けプロモーション支援サービスを展開しております。
デジタル田園都市国家構想交付金を狙ったプロモーションをご検討の企業は、ぜひ弊社にご相談ください。貴社に合ったサービスをご提案させていただきます。
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この記事を書いた人
株式会社ジチタイワークス 中山 有希
2017年、新卒として株式会社ホープへ入社。広告事業にて自治体営業を担当し、プロポーサルによる企画・提案、入札を約4年間経験。
2021年より、ジチタイワークス事業のマーケティングを担当している。