5年連続グランプリ!「広報きくち」のブランド戦略(熊本県菊池市・野中さん)

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年に一度、広報紙を審査・表彰する広報コンクール。熊本県のコンクールで2012年度から5年連続で最高賞のグランプリを受賞している菊池市の「広報きくち」。美しい表紙写真と一歩踏み込んだ特集で読者を引きつけ、全国広報コンクールでも、5年連続で広報紙や写真、企画、ホームページなどの部門で入選を続けています。

「広報担当インタビュー」第9回は、その菊池市広報担当の野中さんにご登場いただきます。連続受賞するほど高レベルを維持する秘密と、多角的な広報戦略に迫ります。

技術系の職場から広報マンに

――まずは自己紹介をお願いします。

市長公室で広報を担当する野中英樹です。42歳です。菊池市に入庁し、土木、耕地、農林振興、都市計画、下水道の各課を経験しました。大学では法律を学びましたが、現場に出る技術系の仕事でした(笑)。

その後、財政課を経て2010年から広報担当になりました。特にカメラは全くの素人でしたが、菊池は観光地なので、カメラ愛好家が多く、たくさんアドバイスをいただきました。感謝しています。

広報コンクール5年連続受賞

――熊本県広報コンクールで5年連続のグランプリおめでとうございます。

ありがとうございます。庁内のほかの職場で頑張っている職員はたくさんいますが、広報には表彰してもらえる機会があり、とても恵まれていると思います。市民の方が受賞を喜んでいただき、地域愛にもつながっていますし、大変ありがたいですね。

――受賞の決め手はズバリなんだと思われますか?

「癒やしの里 菊池」のブランドイメージを作ったことが良かったと思っています。庁内と市内全体で意思統一が図れ、一つのコンセプトに基づいた情報発信ができていると思います。市のHPを開いてもらえば分かりますが、HPを観光と行政情報に分けて表示するなど工夫しています。特に観光情報はSNSは入り口、詳しい内容はHPに誘導する仕組みにしました。

こだわりの写真

――「広報きくち」では毎回、美しい表紙の写真が印象的です。

大変ありがたい評価です。表紙の写真はほとんど私が撮影しています。

インパクトのあるもので手に取ってもらうためというのもあるが、菊池市の知っているところ、知らないところなど地域の魅力を伝えたいということがあります。きれいなだけの写真じゃなく、特集のテーマに沿ったものを掲載して訴求力を高めるように意識しています。

――特に思い入れのある一枚はありますか?

平成27年度に特選を受賞した11月号です。場所は歴史公園鞠智城で個人的によく立ち寄る場所です。

いつ行っても空がきれいで癒されるんですが、当日は天の川を撮影する目的で行きました。23時までライトアップされているため、消灯を待ち深夜0時ごろに撮影しました。真っ暗でだだっ広い公園に一人ぽつんと撮影していましたが、寒くて静かで暗くて怖かったです。

――昨年は熊本地震がありました。

平成28年6月号では「復興の光」というタイトルで特集記事を掲載しました。表紙の写真は災害事務と取材で憔悴し、記録することに葛藤していたときに出会った光景です。被災地に寄り添う人々と子どもたちの笑顔を見て涙を流しながら撮影しました。

悲劇的な写真でインパクトを求めるのではなく、復興をイメージできるポジティブな写真で見た人に前向きな気持ちになってもらいたいと考えました。広報担当は何の役割があるのか、カメラを置いて手伝った方がいいのではとジレンマを抱くことが多々あり自問自答しましたが、自分の役割を再確認した瞬間でもあります。

広報紙を市民の行動のきっかけづくりに

――特集記事のテーマはどのように決めているのでしょうか?

特集を考えるにあたって気をつけているのは、「いい話だった」で終わるのではなく、市民の皆さんへの行動のきっかけづくりを大切にしていることです。

例えば、掃除のボランティアをやっている人をただ紹介するのではなく、「いつやるので、一緒にやってみませんか」という市民の呼びかけにしています。広報担当になった当初は特集を掲載すること自体に意味があると思っていましたが、本来の広報としての役割を考え抜いて、そう思うようになりました。

平成28年3月号、ハンセン病の特集号。差別のない社会のために必要なことのひとつは「知る」ことではないでしょうか。当事者にお話を聴いたり講座を受講することはその近道となるかもしれません。

多方面に渡る広報

――新たに取り組んでいることはありますか?

最近では、取材現場で写真のほかに動画を撮影します。2年前にドローンを導入して撮影に使う事もあります。撮った写真や動画はSNSで発信するほか、観光セクションでも活用してもらい、さらに広報紙にスマートフォンをかざすとYouTubeに誘導され動画が見られる「AR動画」の仕組みにしています。

昨年は熊本地震以後の復興の取り組みを半年間、動画に撮りためていて、8分のダイジェストムービー「負けんばい菊池 負けんばい熊本」にまとめました。イベントの際に公開したり、DVDにして市内の学校や団体、これまで支援をいただいた県外の自治体や民間団体などに配布しています。被災地に目を向けてもらうきっかけにしたいという思いです。

このように広報紙にとどまらず、ターゲットに応じてHPやSNSなどを通じて幅広い手段で菊池市の魅力発信を強化していることに注目してほしいです。

市民が前向きになれる広報紙

――今後、どんな広報紙を作っていきたいでしょうか?

熊本地震で土砂崩れや落石の影響で、菊池渓谷は復旧工事を行っており、まだ立ち入り禁止です。そんな状態でも、市民が前向きになれる広報紙づくりをしたいです。広報担当になって7年。仕事を広げすぎた感じもしますが(笑)、大事なところは失わず、クオリティを下げずに続けていきたいですね。

取材:読売新聞西部本社 Copyright (C) The Yomiuri Shimbun.