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【前編】特定健診の勧奨にマーケティングを導入! 受診率3%アップの秘訣とは(福岡県福岡市)

特定健診を受けて早期に異常を見つければ防げる病気もあるのに、なかなか健診の受診率が上がらない――。

苦慮していた福岡市は、特定健診の勧奨プロジェクトを推進し、受診率アップを達成。その内容とは?

福岡市保健福祉局 国民健康保険課にインタビューした。

もともと福岡市では受診者数そのものは毎年微増を続けてきたものの、県の各自治体の中で受診率は最下位レベル。40~50代の人々は仕事で忙しく、60~70代は通院している人が多くて、時間をとって健診に行く人が少なかったのだ。

また、がん検診と特定健診の違いを理解している人も少なく、特定健診をなぜ受ける必要があるのか、その理由をきちんと伝える必要があった。死亡原因の約5割を占めるのは脳卒中や心臓病、糖尿病などの生活習慣病だといわれている。特定健診はこの生活習慣病にかかる恐れのある人を見つけるのが目的だ。

糖尿病等の生活習慣病を重点的にチェックして保健指導(生活習慣のアドバイス)をする。重症化を防ぐことができれば、市民のQOL(Quality Of Life)を保てるのだ。また、市の医療費の削減、介護費の削減につながり、労働人口の減少をくい止めることができる。市民がいつまでも健康でいられるよう、特定健診の受診率アップは達成しなくてはならない課題だった。

試行錯誤して感じた「限界」

微増してきた受診者数が落ち込んだ年があった。平成27(2015)年度のことだ。それまで、「目にとまるように」と特定健診のDMのデザインを変えたり、はがきのサイズを変えたり、課内で毎年工夫はしてきた。また、冬期に集中する受診時期を平準化するため、市民それぞれの誕生月にはがきを送ったこともあった。それでも、受診率が下がってしまう。

平成28(2016)年度は「まず、自分たちでできることを」と、送付対象者をグループ分けすることにした。2年連続で健診を受けている人、昨年初めて受けた人など6パターンに分類。デザインも見直した。「デザインをどうするかが最も大変だった」と国民健康保険課の小陳直子さんは話す。「私たちは必要事項を書くことはできますが、効果的な伝え方がわかりません。そこで、キャンサースキャンが公開していたモデルデザインを取り入れることにしたのです」

はがきは今までのようにカラフルな漫画やイラストを使うことなく、文字だけ、黒1色。それを特定健診未受診者に送ったところ、予想以上の反響があった。「特定健診のはがきを初めて見た」と話す人が多く、問い合わせの電話が多数かかってきて、電話回線はパンク。「やはり餅は餅屋ですね。プロのノウハウを使うと受診率が上がると手応えを感じた出来事でした」(小陳直子さん)

前年度比約3%アップ受診時期の平準化に効果

平成29(2017)年度の特定健診に関する勧奨プロジェクトは、28年度の3月に公募した。選ばれたのが、キャンサースキャンだ。同年4月にプロジェクトがスタート。マーケティングの知識をもとに対象者を7グループに分け、はがきの発送タイミング・回数を以前より増やした。

6月からはがきを発送しはじめると、すぐに受診者数に反映される。以前は年度末に達成していた月別受診者数7,000人を10月にも達成し、受診率は3%アップ。1年で3ポイントも上がることは今までにない。「マーケティングに裏打ちされた方法をとると、こんなにも数値が変わるのかと驚きました」(松村むつみさん)

今年も継続してキャンサースキャンとタッグを組んで勧奨プロジェクトを実施している。ただ、今の方法を変えずに勧奨を続けると、いつかは効果が薄れると考えている。「キャンサースキャンにアドバイスをもらいながら、新しい展開を考える予定」だと里美光紀さんは話す。

特定健診を受診された方にどう保健指導をしていくか。それがスタートだ。「市民の皆さんに今の自分を知っていただき、これからの健康づくりに
つなげるのが目標です」(松村むつみさん)

特定健診の受診率アップを目指し福岡市が取り組んだこととは?

How To 01:対象者をセグメントする

2年連続で受診した人、前年に新規で受診した人、過去5年間に受診がある人、過去5年間に受診歴がない人など、対象者をグループ分け。キャンサースキャンの技術で通院歴ある・なしも含め、7グループに分けることができた。グループごとに勧奨はがきの文面を変え、訴求力を高くする方法をとっている。この分類方法を各区の担当者にも伝え、共有した。

How To 02:スケジュールを立てる

対象者を7グループに分けたのち、「A・B・C」「D」「E」「F」「G」の5パターンに分類。キャンサースキャンの経験を生かし、未受診者には2回に渡って通知する勧奨スケジュールを立てた。「A・B・C」はたとえば前年度の受診月に応じて「推奨する受診時期」を設けてはがきを送り、未
受診者には再度2~3カ月後にはがきを送付。さらに5パターンすべての未受診者に1月にも再度勧奨を行う。

How To 03:はがきの文面にマーケティングの視点を導入

28年度までは職員がはがきのデザインも考えていたが、キャンサースキャンのモデルデザインを導入して反響があったことをきっかけに、外部に委託することに。マーケティングの専門家・公衆衛生の専門家が監修していることもあり、前年度比3%アップの受診率につながった。推奨期間を設けたことで、「この時期しか受けられないのか」と市民からの問い合わせもあったが、目標でもあった早期受診促進の効果が高かった。

How To 04:各区に確認・調整

発送資材(はがき)の内容確認。さまざまなパターンを市、各区とも全部確認をする。これがかなり大変だった。「あれも書かないと」「これを入れてほしい」など受診にまつわる注意事項の追記依頼がかなり発生した。しかし、要望をすべて盛り込むと今までの勧奨はがきと変わらない。キャンサースキャンの提案に沿い、最低限必要な情報だけを残し、現場へは根気強く説明した。受診率が伸びてくると、勧奨はがきへの追記要望はなくなったという。

How To 05:複数の課・各区と会議を開いて連携

①各課、各区と連携する

今回の受診率アップのプロジェクトは、「市民の健康」に関わる課が協力してこそ数値にも反映されると考えた。区の保険年金課、健康課、地域保健福祉課の担当職員と、市の担当者が集まり、チームを結成。また、副市長から各区の区長宛てに受診率アップの取り組みに力を入れるよう通達してもらった。

②会議を実施

28年の初年度は1年に7回、今は年に4回会議を開催している。また、市の担当者が各区をまわり、研修を実施し、プロジェクトへの協力を要請。はじめは各区での受診率に対する関心は薄かったが、チームで課題に取り組む場を設け、想いを共有したことで競い合うように改善案が出るようになった。

③各区の改善案を共有する

各区の毎週・毎月の受診者数だけでなく、独自の取り組みも共有。保険年金課の担当者が窓口で市民の方々に勧奨する、医療機関を訪問して健診の協力を頼む、受診を促すカードの制作など、成果が上がった取り組みは別の区でも実践された。全市でプロジェクトを遂行すると「じぶんごと」として捉えられる。

④コンサルティング

キャンサースキャンの業務ははがきのデザイン・発送だけでなく、受診率アップのためのコンサルティングも含まれる。市と区が連携する体制をつくり上げたのち、29年度は各区の希望者を集めてキャンサースキャンの研修会を開いた。区ごとの取り組みやチラシなどの制作物に対してアドバイスをもらっている。

Results

〇例年、年度末に達成する月別受診者数7,000人を、10月に突破
〇受診時期の平準化に効果があった
〇各区が連携し、受診率アップの取り組みに競争意識が芽生えた。「月報はまだか」と電話がかかってくるなど担当者の意識の変化があった
〇会議、研修、話し合いの場、成功体験を横展開する場をつくり、良い事例は共有
〇29年度の各区の受診率目標数値は、今までの最高受診率+1%以上で設定。ほとんどの区で達成

 

後編はこちらから

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