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  1. 市長と一緒に定例会見!?本気すぎるコスプレ公務員“バナナ姫ルナ”の仕事術とは

市長と一緒に定例会見!?本気すぎるコスプレ公務員“バナナ姫ルナ”の仕事術とは

2018年6月28日、「ジチタイワークス・第2号発行記念セミナー」が開催されました。北九州市のコスプレ公務員”バナナ姫ルナ”によるトークセッションの他、ワークショップなど最新の自治体PR事例が学べるプログラムを実施。本記事ではトークセッションの様子をご紹介します。

【登壇者】
北九州市職員 井上純子氏
株式会社北九州シティFM 熊谷美佐子氏

本気すぎるコスプレ公務員“バナナ姫ルナ”

出典:北九州市 http://www.city.kitakyushu.lg.jp/san-kei/09600052.html

コスプレ公務員”バナナ姫ルナ”とは、北九州市職員の井上純子さんによる、観光PRを目的としたキャラクターです。平成28年7月の活動開始時点から全国版テレビを始め、さまざまなニュースに取り上げられるなど、一躍有名になりました。

今回はその舞台裏から、公務員によるメディアの付き合い方など、ざっくばらんに語っていただきました。

誕生秘話

株式会社北九州シティFM 熊谷美佐子氏(以下、熊谷) メディアにはたくさん取り上げられているバナナ姫なんですが、本日は参加者が自治体の職員さんばかりなので、一般のメディアでは書けないようなことをお聞きしてみようと思っております。

まず、バナナ姫の活動って公務ですよね。代休だったりそれに伴う費用とかどうなっているんですか?

北九州市職員 井上純子氏(以下、井上) そこは一般の職員と全く同じでして、みなさんよくご存じの制度だとは思うのですが、土日であれば時間外の手当てがつくか基本的に振替ですね。

なので土日に法被を着てイベント出演している方と同様に、バナナ姫ルナを演じるからといって手当てには何の違いもありません。

熊谷 ちなみに、衣装やヘアメイクの方もお金がかかりますよね。その辺はどうなっていますか。

井上 ベースは市の予算から作ってもらったのですが、期間が限られていたうえに私自身のこだわりが強かったので、結局は自分で手掛けることが多かったです。また、基本的に衣装は自己管理し、準備も自宅で行っておりました。そこについて、手当ては何も発生していないです。

原点はハロウィンの仮装コンテスト

熊谷 バナナ姫を始めるまでに、何かコスプレの活動みたいなことをされていたんですか?

井上 コスプレという言葉を使うと「コスプレイヤーなんですか?」と言われることがありますが、コスプレイヤーの活動は全くしたことがありませんで。

ただ年に一度のハロウィンの仮装コンテストには「グランプリがほしい!」という強い想いから参加していました。その結果、3年目となる「こくらハロウィン2015」で見事グランプリを受賞することができました。何かしらのキャラクターになりきる、というのはバナナ姫が初めてですね。

「こくらハロウィン2015」出場時

熊谷 小さいころから例えばAKBが好きだとか人前に出るのが好きだとか、個人的な特性があってのことでしょうか?

井上 幼少期に劇団でミュージカルに出演したという経験もあり、人前で何かパフォーマンスすることに抵抗がなかったのかもしれません。あとは、ハロウィンを通じて、違う自分になって積極的なPRをすることの楽しさを知っていたことは役に立った気がします。

反響を見てニーズに合わせる

熊谷 最初(初めてのイベント出演が全国ニュースに取り上げられた)から、いきなりぽーんといきましたね。

井上 あれは私も驚きましたし、我ながらすごいことだなと思いました。ただ、その時は訳が分からず、周囲の反応の方が大きかったです。

熊谷 こういうのって狙ってもスベることが割とあるんですよ。だけど狙わずに拡がっていくというのが、これは非常にいいモデルケースですね。

井上 ありがとうございます。スタートからあまりに反響がよかったので、さらに可能性があるかもと思いました。

もともと何年やるといった予定もなく始めたので、先は見えないながらもニーズに合わせて、「反響があるならこういうことをしてみようか。」と一歩一歩進んでいきましたね。

積極的なエゴサーチで情報を仕入れる

熊谷 「公務員が何をやってるんだ。」みたいな、そういった声はなかったですか?

井上 そうですね。いいことばかりではありませんでした。

「コスプレ公務員」という名前をつけてしまったので、そこに反応する方も一部いらっしゃったようです。2ちゃんねるなどを見たら、そういった声もありましたね。

また「本気すぎるコスプレ公務員」というタイトルですが、これは一番最初のリリースで市が自ら名付けました。上司と相談し、何かいいタイトルないかな、どうせするなら”◯◯すぎる”がいいんじゃないかと。

それでも、実際に職場にクレームの電話がかかったことはなく、反応があったとしたら前向きな応援の手紙だったり電話がほとんどでした。

熊谷 そうやって炎上を狙う商法もあるし、でもそういうのは一部の妬み・嫉妬みたいなそういう感じかな。ほとんどみなさん好意的で。

井上 上司は「(ネットなど)見ない方がいいんじゃない?」と言っていたんですが、わたしは積極的にエゴサーチをしてました。常に客観的な意見を知っておかないと心配だったので、情報を仕入れるという感じです。

引退の反響

熊谷 この春引退なさった訳なんですけれども、最後の「3人の子持ち」というのは、私の周りでも相当びっくりしていました。引退よりもそっちが驚きで。

井上 職場では当たり前に知られている事実なんですが、外部の方と接していくと「子どもが3人いる」ことに驚かれることが多かったんですね。そこで、上司と話して「隠しネタにいいね」と(笑)。

熊谷 ほんとにお世辞抜きにお若いし、実年齢より若く見えるので独身かと思っていて。結婚していることにびっくりして、さらに子どもが3人もいるというのは衝撃でしたね。

井上 まさかあそこまで反響があるとは。

熊谷 バナナ姫の活動と並行して通常のお仕事もありますよね?バナナ姫ルナはメインではないでしょうから、大変だったんじゃないですか?

井上 はい。バナナ姫をするからといって通常業務が減るということは全くなかったので、基本的にはデスクワークを主にしながら、月一度くらいのペースで活動していました。

熊谷 月一回ぐらい?活躍の度合いを見ているともっと頻繁にしているのかなって印象があったんですが。

井上 イベント出演などは、あまり時間がとれないので一日になるべく被せていました。

依頼はたくさん頂戴するんですが全て対応できる訳ではなかったので、市のPRにつながるものとスケジュールに合うものを選びながら対応させていただいておりました。

2ヶ月でフォロワー1800人!実感した応援の声

熊谷 バナナ姫は有名になりましたけど、中の人として井上さんのFacebookにもたくさんのフォロワーがいらっしゃいますよね。いわば、井上さんのファン?

井上 バナナ姫を辞めると発表するまでは、そんなに反響があるなんて思っていませんでした。ですが、その発表後に私自身を応援してくださる声がたくさん届きまして。

そこで、辞めた後にこのまま何もしないでただ隠れてしまうのも勿体無いですし、引き続き応援してくださる方々の気持ちに応えたいなと思い、今までしたことのなかった個人のSNSを引退後に始めました。

熊谷 普通はね、市発信だとSNSはなかなか難しくて、上司の許可が必要となるはず。個人の発言ではあるにせよ、北九州のPRに繋がりますよね。その辺はもうノーチェックですか?

井上 市公式のものではなく井上個人のSNSになるのでそこは何も。責任持ったことは伝えられないかもしれないですけど、個人の目線と感覚で投稿しています。

熊谷 Facebookはちなみに何人くらいフォロワーがいますか?

井上 始めて2ヶ月くらいなんですが、1800人くらいでしょうか。

熊谷 すごいですね。2ヶ月で1800人!

井上 有難いと思っています。

熊谷 私も拝見しましたけど、いいね!だとかコメントが多いですもんね。個人としての投稿になると、より親近感を持ってもらえる気がします。

井上 そうですね、みなさんの反応を見ながら私も楽しんでいます。

活動を振り返ってみて

熊谷 改めて、バナナ姫をやって一番よかったことは何ですか?

井上 仕事に対する考え方が変わったところですね。観光課では、前に出る仕事はバナナ姫ルナが初めてだったので、外部の方に直接触れ合ったり声をもらうのも初めてでした。

また、こんなに応援されることも今までの人生でありませんでした。誰かのために頑張るとこんなに応援してもらえたり、「ありがとう」という言葉を頂けるんだなということを知りました。

昔の私だったら何も感じなかったかもしれませんが、「誰かの役に立ちたい」「無償でもいいから何かやりたい」という想いを抱くようになったのは、バナナ姫がきっかけだと思います。

熊谷 活動を通して印象に残っていることはどんなことでしょう?

井上 自治体職員として働いて、観光やイベント関係の仕事でも第一線に職員が出るというのは珍しいと思うんですね。マスコミの方と接したり外部の方と接したり。一職員が上司の責任でそれをやるというのはかなり貴重な体験でした。例えば市長の定例会見で並んでみたりですとか(笑)。

熊谷 たしかに、北九州市の職員さん1万人近くいらっしゃる中で、市長と一緒に定例会見できるってなかなかないですよね。

井上 そうですよね。今思うとすごかったなと思います。

ありえないものを組み合わせると意外におもしろい

熊谷 今日は自治体の方々ばかりなので、せっかくですのでみなさんにアドバイスをお願いします。次のバナナ姫を狙っている人がいるかもしれないし、自分の所で何かをされているかもしれませんので。

井上 バナナ姫のケースは結構特殊だと思うので、私から的確なアドバイスっていうのは難しいのですが・・。

あえて何かお伝えさせていただくとすると、どこの自治体でも例えば地方創生などで大きな金額をかけて広報で動画作りとかたくさんされていると思うんですが、バナナ姫はほとんどお金をかけていません。

パブリシティということもあって、メディアの方々には自由に記事を書いていただきます。お金をかけないのでどういった内容を書かれるか分からないんですが、その分記者さんや一般の方のニーズを感じ取ることができました。

そこを踏まえて、どうすればいいのか、どんな発信がみなさんの心を掴めるのかを考えること。つまり、市からの一方通行ではなく常に相手の立場に立って、市のために頑張る姿がよかったのかなと今になって思っています。

熊谷 ありがとうございます。

今回「バズった理由」というのが、テーマにもなっているんですが、「公務員がそういうことをする?」みたいな、広告業界でいうAとZを組み合わせる。端と端のもの、ありえないものを組み合わせると意外にこれがおもしろいんですよ。「え、これがこうなの?」みたいな。

草食系男子という言葉が流行りましたけど、だいたい「男」というと普通だったら「肉食」が想起されますが、「男」と「草食」という端と端のワードを組み合わせたことで、草食系男子という言葉が社会記号化され転がっていくというようなことですね。

だから、物を考えるときに端っこと端っこで一番遠くのものをくっつけてみることは、是非お試しいただければと思います。

質疑応答タイム

Q 衣装代は備品からですか?消耗品からですか?

井上 消耗品扱いをしております。

Q 辞められて、次の方は出ないんですか?

井上 現在二代目の予定はないです。ですが市としては全く受け付けないというわけではないはずです。ただ二番煎じが必ずしもうまくいくかというリスクも考えていると思いますので、公務員から出すかも含めそこは慎重に・・・。またバナナ姫でなくてもという考えはあると思います。

Q 一番協力してくださった上司ってどういう人ですか?その方からはどんなサポートがあったんですか?

井上 この取り組みは、私が表に出ていますが常に裏でフォローしてくれた係長が1人いました。そのため基本的にマスコミ対応やイベント対応のときは、その係長がついてくれていました。そのため、上司の責任のもと私が発言しているという建てつけで取材対応やイベント出演をしていました。

ただ、上司のスケジュールもありますから常に2人セットで人を出すというのは難しいといったところもあり、頻繁にイベント出演ができなかったというのもあるのかなと思います。

熊谷 たしかに、上が変わればコロッと方針が変わりますもんね~

井上 上司がわたしの能力と言いますか、そういった所をまず見つけてくれたのがよかったなと思います。

熊谷 存じておりますが、いい方でよかったです(笑)。

Q お子さんが3人いらっしゃると思うんですけども、子育てと活動の両立で大変だったことはありますか?また、その中で支えになったものは何ですか?

井上 職場では事務処理ばかりで、バナナ姫の活動は全くしておりませんでした。ではバナナ姫のランニング的な維持、準備をどこでしていたかというと基本的には全て自宅で、家族の前でだったんですね。

土日も時間をとられることや出張などもありましたので、そこはかなり家族に迷惑や負担をかけました。また、理解してもらったことが、わたしの中では大きな支えとなりました。

Q 土日活動した代休はお子さんと過ごしたんですか?

井上 平日でお休みいただいたりするんですが、子どもは学校でいないので(笑)。土日だから子どもと一緒にいたい時間ではあるんですが、それを取るのは難しかったなと思います。

Q 報道された時点で、公務員で、どこの誰がされているかが分かっており、さらにカミングアウトされてお子さんがいらっしゃるなど正体が完全にバレてしまったと思うんですが、それで何か弊害はありませんでしたか?また、個人情報のリスク管理はどのようにしていましたか?

井上 観光PRは業務であり、時間も業務として使っていたんですが、取材を受けるかどうかを上司が無理に指示することはありませんで、基本的に演じる側である私の責任と判断で対応していました。そのため、個人情報が流れるかもしれないというリスクも考えた上で、対応するかしないかの決断は私の覚悟でやっていました。

Q マスコミにPRする際に、何か意識していること・気を付けていることがあったら教えてください。

井上 基本的にお金を払った広告ではないので、どういった所が拾われるかというのは、わたしも上司もかなり気を付けながら発言していたつもりです。ちょっとおもしろく取り上げられて「あらら」と思うときもありましたが、結果それで話題になるということもありました。

そこは大きくプラスに働いているのであれば、お金を払っていない以上パブリシティを使う覚悟ということになるかと思います。

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