仕事の元手、自治体の「予算」のはなし
※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。
自治体ビジネスをやってみたい、もっと進めていきたいという企業が必ず知っておかなければならないことは何でしょうか。一つ選ぶとしたら、迷わず「予算のこと」が出てくるでしょう。
自治体職員さんとビジネスの話をするときに、必ず出てくるのが予算があるとかないとかいう話題。耳慣れたこの予算というコトバ、実はどのようなものかきちんと説明できる人はそう多くありません。
今回は、自治体の「予算」のお話です。自治体ビジネスの元手「予算」のことをざくっとつかんでください。
自治体予算とは何か
自治体では福祉・教育・ごみ処理・消防・道路の整備など、地域住民の生活を支える様々な仕事をしています。こうした仕事をするためには、計画を立てたり人を使ったり工事を発注したりお金がかかりますよね。そのお金はどこからくるのか。そう、地域住民や地域で仕事をしている企業や商店が年に1回収める「税金」として集められます。
ここで問題が出てきます。
自治体の年度は4月1日から翌年の3月31日まで。納税でお金を集めてから、新しい年度の4月1日以降に地域の事業や住民サービスそれぞれにどれだけお金がかかるのかを検討し発注しているのでは間に合いません。住民サービスの内容を検討している間にサービス提供が途切れてしまいますよね。
そこで地方自治体は、予め1年前から集まる税金などの全体金額を予測することと、その予測額の中で次の年度にどんな事業や行政サービスを行うのかお金の使い道を前倒しで決めることの両方を済ませておきます。「予め」入ってくるお金と出ていくお金を「算出」したもの、これが「予算」というものです。
ということは、自治体に何か商材を売り込んだりビジネスとして一緒に事業をしようと思っても、そのための元手となる予算が前の年度に確保されていないと商談にすらなりません。「予算がありません」と言われて終わってしまうというわけです。
自治体予算「お金の使い道」がビジネスの元手
自治体予算は、ざっくりいうとお金の出どころの「歳入」と使い道の「歳出」の2つに分かれています。民間企業へ仕事を発注する元手は「歳出」。では、実際自治体は歳出の予算の中からどんな事業にどれだけお金を使っているのでしょうか。
平成30年度の相模原市の歳出予算を参考にいくつかご紹介しましょう。
平成30年度の相模原市歳出予算は2,935億円。その中のごく一部ですが、例えばこんなことに予算が使われています。
■ 子育て支援の充実、37億712万円。
児童クラブ・保育所などの待機児童対策、小児医療費の助成、新生児聴覚検査の公費負担などで構成されています。
■ 子どもの貧困対策、7億4,570万円。
子どもの居場所づくりの指針、ひとり親家庭などへの自立支援、高等学校への就学支援などでも予算が使われています。
■ 防災力の向上・災害に強いまちづくり、67億504万円。
市民の生命を守るための取り組み、道路・橋梁の補強、公共下水道の耐震化などが計上されています。この辺りは普段の住民生活を送っているとなかなか目につきませんが、自治体の中にはこうしたことへの対応ノウハウはありません。全て民間企業にビジネスとして発注し推進される事業ですよね。
■ 地域産業の強化・支援、114億5,466万円。
産業基盤の強化、中小企業の支援などでこれだけの予算が投じられています。補助金なども含まれていますが、産業振興支援のノウハウを持つ様々な民間企業が活躍する領域でもあります。
■ 交通ネットワークの充実、11億6,054万円。
小田急多摩線の延伸、幹線快速バスシステムの導入に向けた取り組みなどに予算がついていますね。この辺りも民間企業とビジネスとして連携して事業を展開する予算です。
ご紹介した予算はあくまでも地域の事業に関わるものですが、自治体組織内部のマネジメントに関わる予算もあります。職員の人材育成や業務システムのICT基盤整備、窓口業務のアウトソースなどにも予算が確保され、民間企業へビジネスとして発注されています。
当初予算と補正予算の違い
さて、今までご紹介したものは前年度に予め組まれる予算で「当初予算」と呼ばれるもの。4月1日から翌年の3月31日までの1年間に必要とされる予算ですよね。
でも、考えてみてください。もし例えば年度の途中自然災害などに見舞われ、地域のインフラがダメージを受け地域住民が被災するようなことがあったら?そのための予算は当初予算には組み込まれていませんよね。そうした予期せぬ事態や経済情勢の変化や世論による対応が発生した場合には、その対応のため「当初予算」に追加変更を加える必要があります。
これが「補正予算」と言われるもので、年度の途中であっても3の倍数月に開催される地方議会で議決されれば追加で使えるお金として確保することができます。この補正予算は、その年度の中で使える予算。例えば災害対策で必要な備品や復旧工事などの補正予算が組まれた場合は、防災関連の事業を展開している民間企業にとってはビジネスパートナーとして自治体と一緒に災害復旧に取り組む機会になるわけです。
まとめ
・当初予算は前年度に予めお金の出どころと使い道を算出したもの
・予算の「歳出」には民間ビジネスの元手が含まれている
・補正予算は年度の途中であっても社会情勢の変化や不測の事態に応じて確保されることがある
自治体予算の基本中の基本、いかがでしたでしょうか。
予算や歳入・歳出という用語は少し馴染みがありませんが、日々の暮らしや自社ビジネスとの関わりをイメージだけでもつかんでいただければ幸いです。
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