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  1. 市民の心に寄り添う広報紙~宝塚市の試み~(兵庫県宝塚市・今社さん)

市民の心に寄り添う広報紙~宝塚市の試み~(兵庫県宝塚市・今社さん)

「広報紙の作成にあたって一番力を入れていることは?」。多くの担当者にこんな問いかけをすると、ほとんどの方がすかさず「特集です」と答えます。全国の広報紙を読み比べても、面白そうな特集の広報紙は思わずページを開いてみますよね。

兵庫県宝塚市の「広報たからづか」はこれまで、性的少数者(LGBT:注)や発達障がいなどを特集のテーマに取り上げてきました。様々な意見もある中で、多様な市民の考え方や心に寄り添うことを大切に、特集を続けているそうです。「広報担当者インタビュー」の11回目は同市広報課の今社こんじゃさんに、特集づくりにかける思いを語ってもらいました。

注:性的少数者の総称の一つとして使われる「LGBT」とは、女性同性愛者の「レズビアン(Lesbian)」、男性同性愛者の「ゲイ(Gay)」、両性愛者の「バイセクシュアル(Bisexual)」、心と体の性が一致しない人を指す「トランスジェンダー(Transgender)」の頭文字を組み合わせた言葉です。

あこがれの宝塚市に就職

――自己紹介をお願いします

今社政彦、現在36歳です。宝塚市に隣接する三田市に生まれ育ち、西宮市の大学で経済学を学びました。宝塚歌劇団がある宝塚市にあこがれ、市役所の採用試験を受けて平成15年に入庁しました。市税収納課、財政課、政策推進課を経て広報課は3年目です。

広報課は課長以下9人のスタッフ。マスコミの皆さんへの広報活動やホームページの管理、市が出資しているコミュニティー放送「エフエム宝塚」の番組作成などの業務もありますが、なんと言っても広報紙の作成を一番大切に思い、一生懸命作っています。私は係長として編集全体を統括し、実際に自分で記事を書くこともあります。

1年間の特集を前年度に計画

――「広報たからづか」では特集が魅力的ですね

作っているからには「読んでもらいたい」と言う気持ちが強いです。興味を持って広報紙のページをめくってもらうために、表紙の写真とタイトルにこだわっています。

特集のテーマ選びはまず、市役所の各課から次年度に取り上げてほしいテーマを募集し、広報課内で「どんなことを市民にお伝えしたいか」などを議論します。

その後、12回分を企画段階から市長に説明し、アドバイスもいただきます。計画が変わって順番が入れ替わることはありますが、新卒を含む4人の若いスタッフがそれぞれ特集テーマの担当となり、2~3ヶ月かけて取材・執筆し、表紙の写真とタイトルも考えます。

苦労作が相次ぎコンクール入賞

――印象に残っている特集は?

2016年7月号の特集「ありのままの自分で~性的少数者に寄り添うまちづくり~」です。

宝塚市は同性カップルの宣誓に対して「パートナーシップ宣誓書受領証」の発行を同年6月から始めました。東京都渋谷区などに続いて全国4例目の取り組みです。

宝塚市が生きづらさを抱えている人たちに寄り添い、誰もが自分らしく生きやすい社会の実現を目的にしていることや、電話相談窓口の開設、支援する人たちなどを4㌻にわたって特集しました。

表紙の写真は、担当者が街で見かけた虹色の傘を「これだ!」と購入。大空に羽ばたくイメージを表現しようと、何度も撮り直して、「私の色は私が決める。」とタイトルをつけました。

あなたは何色を選びますか?どんな色も自由に決められ、受け入れられる世の中を望みます。

「広報たからづか」平成28年7月号
http://machiiro.town/p/12020#page/1

市長が性的マイノリティに寄り添うまちづくりの取り組みを始めると表明してから否定的な反響も多く、その意味を分かりやすく説明しようとの思いからの特集でした。

広報紙の内容そのものに対する苦情は数件でしたが、驚いたことに、その7月号が兵庫県広報コンクールの広報紙部門(市の部)で、県内1位にあたる「特選」の評価をいただくことになったんです。広報課全員で喜びを分かち合いました。

また、発達障がいをテーマにした同年9月号では、専門医の話や相談窓口の対応者を写真入りで紹介し、近畿市町村広報紙コンクールで「優秀賞」をいただきました。

まずは関心を持って「知る」ことが差別や傷つく人を減らせる第一歩になるのではないでしょうか。

「広報たからづか」平成28年9月号
http://machiiro.town/p/13298#page/2

いずれも若い職員が仕事にのめり込んで作った苦労作です。特集では「心を寄せて紹介する」ことを大切にしています。広報を長く続けていると、どうしても行政からの目線になりがち。市民目線を常に意識しながらやっていきたいと思います。

ただ、難しいテーマばかりではなく、時には「湯のまち宝塚今昔物語」(2016年12月号)などリラックスできるテーマで特集することもあります。

宝塚温泉に出かけたくなる、ほっこり特集記事です。

「広報たからづか」平成28年12月号
http://machiiro.town/p/16212

手に取ってもらう工夫続けたい

――今後はどういったテーマを取り上げる予定でしょうか

島根県松江市とは特急「やくも」が宝塚駅に停車することが縁で1967年に姉妹都市の協定を締結しました。観光やスポーツ、文化、教育などの幅広い分野で交流を続けていますが、今年で50周年になるので、特集で取り上げようと思っています。

――市内外の広報紙読者に伝えたいこと

様々な手法で広報紙を手に取ってもらう、読んでもらう、「きっかけ」を用意したいですね。そのためには、市民のみなさんに多く出演いただくことや、例えば、読者へのプレゼント企画なども取り入れたいなと考えています。

ささいなことでも、それをきっかけに多くのみなさんとつながることができればいいですね。

 

取材:読売新聞西部本社 Copyright (C) The Yomiuri Shimbun.

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