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  1. BtoLGマーケティングの実務 〜「入札」金額の予測に必要な3つの情報〜

BtoLGマーケティングの実務 〜「入札」金額の予測に必要な3つの情報〜

BtoLGマーケティングの実務 〜「入札」金額の予測に必要な3つの情報〜

※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。

皆さん、こんにちは。
株式会社LGブレイクスルー代表取締役、古田智子です。
さて今回は前回の続き、入札の価格戦略について。入札金額の予測に不可欠な3つの情報について共有させてください。

入札金額の「幅」は予測できる

さて、前回のおさらいです。
入札を落札できている状態の図、改めてみてみましょう。

自社の入札価格が、「予定価格」と「他社の応札価格」より低く、「最低制限価格」より高い。
これが落札できている状態です。

ということは、「予定価格」「他社の応札価格」「最低制限価格」がわかれば、自社の応札価格の金額の幅がわかるということになります。

というわけで、それぞれの価格が意味するところと、見極め方についてみていきましょう。

予定価格

まず、当たり前の原則をお話しします。
予定価格の事前公表がない場合、自治体職員に尋ねても予定価格を絶対に教えてはくれません。自治体職員が予定価格を漏洩したら犯罪になってしまうからです。ちなみに民間企業側が不正に聞き出して落札してしまったらこれも犯罪になります。

ちょっと解説が必要ですね。

地方自治体では、そもそも予定価格を秘密にしなければならないという法律は存在していません。そんなわけで「予定価格の事前公表」をしている自治体があったりします。

ところが、予定価格を事前公表すると、以下の3つの「困ったこと」がよく起こります。

①予定価格が目安となり、健全な価格競争が行われない

本来ならもっと安くできるのに、どの会社も予定価格の範囲内で高めの入札価格を出してきます。これではコストパフォーマンスの高い成果を出せる会社を健全な価格競争で選ぶことができなくなってしまいます。

②談合が起こりやすくなる

これはとても大きな問題なのですが、入札しようとする企業が事前に話し合って落札企業を決める談合の温床となってしまいます。もちろん入札金額も予定価格ギリギリ上限まで各社が入札してきて、結果的に税を適切に使えない、という事態に陥ります。

③きちんと積算ができない会社でも落札できてしまう

予定価格がブラインドになっていると、仕様書に基づいてしっかり積算するというプロセスを通らなければなりません。これが事前に予定価格がわかっている場合、たまたまえいやっと決めた金額で落札できてしまう会社が出てきます。そんな会社に発注した場合、自治体が求める仕事のレベルに全く達しないケースが出てきてしまいます。

というわけで、予定価格の事前公表に踏み切れない自治体が大多数。
一方、事前公表がないからと言って、聞き出すことはご法度。
さあどうする?というわけです。

実はこの予定価格、ある程度予測できることをご存知でしょうか。
どうやって?
それは自治体が毎年開示している「予算書」を見ること。
全ての案件の予定価格そのものが掲載されているわけではありませんが、
少なくとも予算の上限や、だいたいの目安のあたりをつけることができます。

具体的な事例として、福島県郡山市の入札案件をみてみましょう。

下表は、今年の7月郡山市で行われた入札の結果。
「WEB会議用タブレット55台」が入札にかけられました。

結果は、株式会社エフコムさんが税込金額128万8,650円で落札しています。

実はこのWEB会議用のタブレットの購入予算、今年度はじめに開示された郡山市の予算書にちゃんと金額が載っているんですよね。

以下は郡山市の令和2年度の予算書。該当部分を抜粋しました。赤い枠で示したところにご注目ください。

出典:郡山市公式ウェブサイト

WEB会議用タブレット購入、169万円。
169万円という予算を超えて予定価格が組まれることはないということが、この予算書からわかります。

このことから、株式会社エフコムさんが128万8,650円で落札できたのは、応札価格が169万円を下回ったからだということがわかりますね。株式会社エフコムさんは、この予算書をあらかじめ確認して入札金額を決めたのかもしれません。

全ての自治体がここまで明確に予算書を開示しているわけではありませんが、まずは予算書にあたってみる。これが予定価格を予測する上で、まずは鉄板となります。

他社の応札価格

例えばこの郡山市入札案件で言うと、株式会社エフコムさんの128万8,650円より低い金額で入札した会社がいたら、エフコムさんは落札できませんでした。

他社がいくらで入札してくるか、どのように予測すれば良いのでしょうか。
もちろん他社に金額を尋ねるわけにはいきません。

でも、類似の案件で過去に他社がいくらで入札しているか知ることができれば、他社の価格戦略、すなわち予定価格の何%で入札してくるか仮説を立てることができますよね。
仮説を立てて他社金額の予測ができれば、自社の利益も考慮していくらくらいで入札すれば勝てそうか、作戦を立てることができると言うわけです。

この時に強い味方になるのが、自治体が公式WEBサイトで開示している「入札調書」。
入札結果、入札結果調書などとも呼ばれ、過去の入札調書を見れば競合他社の入札金額が載っています。

先ほどのエフコムさん落札が記載されていた資料が、郡山市がWEBサイトで公開している入札結果(調書)の前半部分。同じ入札結果(調書)の後半部分には、他の企業がWEB会議用タブレット55台をいくらで入札してきたかが全部乗っています。

こんな感じです。

出典:郡山市公式ウェブサイト

この入札に参加した企業は8社、1社が無効(郡山市の公告条件、つまり入札に参加する条件を満たしていない・入札の仕方を間違えたなどの場合は無効になります)、1社が辞退。実際に入札金額を提示したのが6社ですね。

ちなみに株式会社福島映機サービスさんは、169万円を上回る170万5000円で入札してしまっています・・・事前に郡山市の予算書に書いてありますよ、って教えて差し上げたかった!

さて、他社の応札価格の予測の仕方は、次の2つの方法があります。

①各社の入札金額を数量で割る

他社の金額をタブレットの数55で割れば、1台あたりの入札金額が想定でき、他の同じような入札案件に参加するときの参考になります。

②各社の入札金額を予定価格で割る

仮に各社が郡山市の予定価格を予算書を確認した上で入札したと仮定した場合、各社の入札金額を予定価格で割れば予定価格の何%で応札したかがわかり、他社の価格戦略の相場感が見えてきます。

入札に参加する都度入札調書で他社の価格戦略について仮説を立てて予測を繰り返していくと、その業界での大体の価格感の予測精度がどんどん高まり、落札率も向上していきます。
ぜひ入札調書の情報を上手に使って、勝てる価格を見極めていきたいものです。

最低制限価格

最後にご説明するのが、「最低制限価格」。

入札はもっとも低い価格を提示した会社が落札しますが、価格の下限が設けられていたりします。この下限が「最低制限価格」。
最低制限価格を下回る金額を入札で提示すると、なんと失格となってしまいます!いくら財政的に厳しくても、安かろう・悪かろうの製品やサービスはお断りというわけですね。

この最低制限価格、甘く見ていると大変なことになります。入札案件の種類と金額によっては、指名停止、いわゆる「出禁」になってしまい、一定期間入札に参加することができないというおっかないペナルティが課せられてしまうのです。

気になるこの最低制限価格、一体いくらくらいがボーダーラインなのでしょうか。
自治体によって、また案件の領域によって異なるので一概には言えませんが、これも入札を繰り返しているうちに、その自治体の最低制限価格のラインがわかってきます。

ちなみに入札初体験の方。これは経験則なので絶対に正しいと言い切れるわけではありませんが、想定している予定価格の70%を下回らない程度が概ねの目安とお考えください。

先ほどの株式会社エフコムさんの場合で見てみましょう。予定価格169万円、落札価格が128万8,650円ですから、予定価格の76.25%。いい線いっていると思います。

まとめ

今回は、入札価格の見極め方の3つの要素について、実例を挙げながら解説してみました。悩ましい入札価格を考える上で、皆さんの参考になれば幸いです。

さて、次回は入札シリーズの三回目。入札に参加する時に押さえておきたい、細かい「小ネタ」をまとめてお伝えして参ります。お楽しみに。

 

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株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子


1990年慶應義塾大学文学部卒。流通業、建設コンサルタント業を経て、1998年に総合コンサルティング会社入社、トップ営業に。コンサルタントとしても中央省庁や自治体受託業務の案件獲得活動から受託後のプロジェクトマネジメントまで一貫して携わり、多岐にわたる領域の公共事業に従事。
2013年2月、(株)LGブレイクスルー創業。企業と自治体が対等なパートナーとして連携し解決を図る社会の実現をミッションとし、自治体調達案件の勝率を高める我が国唯一のソリューション事業を展開。企業研修実績、コンサルティング実績も多数。
著書に『地方自治体に営業に行こう!!』(実業之日本社)『民間企業が自治体から仕事を受注する方法(日本実業出版社)』がある。

自治体ビジネスドットコム:https://jichitai.biz

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