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  1. BtoLGマーケティングの実務 〜プロポーザルの価格戦略〜

BtoLGマーケティングの実務 〜プロポーザルの価格戦略〜

BtoLGマーケティングの実務 〜プロポーザルの価格戦略〜

※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。

皆さん、こんにちは。
株式会社LGブレイクスルー代表取締役、古田智子です。
今回で価格戦略のお話はおしまい。テーマは、額面ではなく企画提案で競い合う「プロポーザル」での価格戦略。
今回も自治体ビジネス初心者がつまづきがちなポイントに絞って、お話ししてまいります。

そもそもプロポーザルって何?

「プロポーザル」。官公庁ビジネス領域ほど、この用語が頻繁に使われている分野はありません。特にこの用語は、「コンペ」とよく混同されてしまいます。まずは官公庁分野におけるプロポーザルとコンペの違いについてお話ししましょう。

「コンペ」という用語は、デザインや設計で使われる言葉ですよね。ざっくりいうと、コンペとは「提案」を評価し選ぶもの。だからデザインコンペなどは、1社がデザインをA案・B案・C案とデザインの提案を複数出すことがあるのです。その中からクライアントが優れたデザイン案を選ぶわけですね。

一方、「プロポーザル」とは何でしょうか。
「提案者」を評価して選ぶ。それがプロポーザルです。

つまり、提案を含めて、それを提案した組織の仕事の取り組み方針、実施体制、実績などを含めて評価する。だから、提案そのものがどんなに優れたものであっても、そのほかの要素が評価に値しない場合は選ばれるわけではない。これがプロポーザルです。

では、何を持って「優れている」と評価されるのか。多くの場合、プロポーザルは評価項目や基準が数値化されて定められ、客観的な立場の評価委員のメンバーが点数をつけて合計点で争われます。つまり、評価には決まったルールがあるんですね。

したがってプロポーザルの価格戦略とは、この評価項目の中の「価格」がどのような位置づけかによって変わってくる。そういうわけなのです。

プロポーザルの勝敗は評価基準に沿って判断される

まずは、ここでプロポーザルの評価基準の例を見てみましょう。

今回例としてご紹介するのは、「江東区ブランディング戦略によるPR広告掲出事業運営」。
2019年6月に東京都江東区から募集されたプロポーザル案件で、予算は6,074,200円(税込み)です。業務の内容は、都営地下鉄への吊り手広告の掲出。 「江東区の魅力を区外に向けて積極的にPRするため、都営地下鉄に区のPR広告を掲出する。」というものです。

さて、この案件。
「江東区の魅力をPRするための吊り手広告だから、区のブランディング戦略に沿った優れたデザインを提案した会社が選ばれるはず。」
こう考える方が多いですよね。でも、果たして本当にそれだけでしょうか。

ここで、本案件の評価基準表を見てみましょう。

評価基準表

出典:江東区公式ウェブサイト

このように、デザインだけではなく様々な評価の項目があって、総合的に評価されるのが分かりますね。
プロポーザルには、企業から出された企画提案書を客観的な視点で評価する評価委員会が設置されます。
ちなみに委員メンバーには通常民間企業とコミュニケーションをとっている職員は加わることはできません。企業と関係性を持たない自治体の管理職員や外部の有識者で編成されています。
公正に評価するための決まりとしてこうなっているのです。

そして委員のメンバーの仕事は、この評価基準に沿って各社ごとに点数をつけること。
多くの場合、委員メンバー各々の付けた点数の合計点で勝者を決めます。

価格競争力がどの程度影響するか見極める

そして注目すべきは、点数。合計100点満点で、それぞれの項目ごとに点数が割り振られています。詳しくみていきましょう。

「1 全体の評価」が30点。
ここは仕様をしっかり踏まえているか、実現性はあるかなど、提案内容の的確性が評価されます。

「2 提案項目」、ここは事業コンセプトが30点、デザインが20点、合計50点。
なんと!誰もが最も重要だと考えるデザインは、100点満点のうちたった20点しか稼げません。デザインの提案を選ぶのではなく、デザインの提案「者」を選ぶのがプロポーザルだということ、お分かりいただけたのではないでしょうか。

「3 業務実施面」は、業務実施体制5点、業務実績・信頼性が10点の合計15点。
自治体はリスクを嫌い、安定的な事業の実施を好みます。この項目はどんなプロポーザルでも必ず評価項目に入ってきます。

さて、最後は「4 価格点」。
値引きで勝負する企業にとっては大変厳しい配点ですね。たったの5点しかありません。

例えば、この江東区案件の場合、予算の6,074,200円から大幅に値引きをして他社と比較し最も低い金額で見積もりを出したとします。その場合は価格点の評価項目で満点の5点は取れるでしょう。

でも、頑張って値引きして満点を取っても100点のうちたった5点しか取れませんよね。
そのほかの項目で大幅に他社に得点を許してしまったら、全く勝負にならないことがお分かりいただけると思います。

ということは、この江東区案件での価格戦略は「無理に低い金額を提示する必要はない」ということになります。金額で無理をするよりも、ほかの配点が高い項目、例えば事業コンセプト30点のところを緻密に練り上げて提案すれば、例え価格点で3点程度であっても充分取り返せます。

一方、プロポーザル案件によっては価格点の配点が高めに設定されているものも。

こちらは、千歳市ホームページリニューアルのプロポーザル案件の評価項目及び評価基準。票の一番下、「3 見積もり価格に関する項目」にご注目ください。

千歳市ホームページリニューアル業務委託プロポーザル 評価項目及び評価基準

出典:千歳市公式ウェブサイト

配点が100点満点のうち20点となっていますよね。この場合、ほかの項目で細かい失点を重ねてしまうと、見積もり価格の20点の配点が大きく影響してきます。

他の評価項目がいくつかで間違いなく満点を取れるならまだしも、そうでない場合は、ある程度価格競争力のある金額を提示する必要も出てきます。いわゆる値引きが有効に効く可能性があるケースだというわけです。

さて、2つの評価項目の事例をご覧いただきました。もうお分かりですね。要は、「評価基準の配点がどうなっているか」が、非常に重要なのです。

全体の配点の中で価格点の占める割合がどの程度か、自社の提案が、どの項目でどれだけ点を稼げそうなのか。こうした配点を基準にして、価格をどうするか検討し戦略的に決定していく。これがプロポーザルの価格戦略のポイントとなります。

まとめ

入札とプロポーザルの価格戦略について、一通りお話ししてまいりました。
今回で一旦マーケティングのお話はおしまいにします。お付き合いいただき、ありがとうございました。
次回もどうぞお楽しみに。

株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子


1990年慶應義塾大学文学部卒。流通業、建設コンサルタント業を経て、1998年に総合コンサルティング会社入社、トップ営業に。コンサルタントとしても中央省庁や自治体受託業務の案件獲得活動から受託後のプロジェクトマネジメントまで一貫して携わり、多岐にわたる領域の公共事業に従事。
2013年2月、(株)LGブレイクスルー創業。企業と自治体が対等なパートナーとして連携し解決を図る社会の実現をミッションとし、自治体調達案件の勝率を高める我が国唯一のソリューション事業を展開。企業研修実績、コンサルティング実績も多数。
著書に『地方自治体に営業に行こう!!』(実業之日本社)『民間企業が自治体から仕事を受注する方法(日本実業出版社)』がある。

自治体ビジネスドットコム:https://jichitai.biz

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