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【レポート】元自治体職員による自治体予算徹底解説

自治体のお金の元手は、住民の皆さんが支払う「税金」です。では、集められた税金の使い道は、どうやって決まっているのでしょうか?それは「予算」です。つまり、自治体予算を知らずして、自治体営業を成功させることはできません。
そこで今回は、元自治体職員である種子田が自治体予算の仕組みや流れ、予算のひも解く方法など、自治体予算を徹底解説します。

この記事を書いた人

株式会社ジチタイワークス ビジネス開発課 課長 種子田 宗希

約10年間、宮崎県小林市役所にて勤務。農業、観光、企画等、官民連携業務に従事。その後、株式会社ホープ入社。広告営業、自治体営業、新規事業開発等に従事。現在は、自治体と企業のマッチング支援を行う株式会社ジチタイワークスにて、自治体向け事業責任者として、自治体営業の戦略、自治体向けサービスの改善、導入自治体へのオペレーション等、行っている。

本記事のゴール

予算編成の流れを理解し、予算編成から見える自治体営業のポイントを把握する

予算編成や要求までの概要を説明しつつ、自治体職員ではないと分からないことを踏まえて解説します。また、グループ会社が15年以上自治体関連事業に特化、年間約1,100の自治体と契約実績を活かし、自治体営業のポイントも解説していきます。

 

予算編成とは?

予算編成とは、翌年度の予算計画を取りまとめることです。毎年度秋~冬に実施され、3月の議会で確定された後、執行可能となります。

民間企業との圧倒的な違いは、行政は予算を使う計画を立てることです。もちろん歳入計画も立てますが、それは基本的に税務・財政部門がやっているので、お金が入ってくる計画を立てる部隊と使う各課に分かれている形です。民間企業では「これくらい売り上げるからこれくらい使える」と収入と支出を整合させながら予算を組みますが、自治体の場合、歳入と歳出が明確に部署で分断されています。

ここから、予算編成スケジュールを解説していきます。

9月~11月:予算編成方針および予算要求の決定

まず、9~10月に予算編成方針が各自治体の財政課でつくられます。例えば、小林市役所でも50課あって、民間企業で言うと50の事業部があるようなものです。それぞれ事業部長がいて、戦略があって、そこから予算を決めていくとなったとき、各事業部がバラバラに予算を組んだら大変です。
そこで「このポイントを押さえてください」という方針を財政課が出し、それに対して各部が方針を出すという段階を踏みます。これが「予算編成方針の決定」です。

逆に言うと、「予算編成方針は毎年いつつくられていますか?」と職員の方に質問すれば、当該自治体の予算編成のスタートが分かります。このスタートは、選挙などがない限りは基本的に変わりません。小林市役所では、例年、9月下旬から10月上旬に予算編成がスタートしました。予算編成方針が発表されない限り、財政課に集約するための財務会計システムに予算を入力できないからです。もちろん予算編成方針が決まる時期はだいたい決まっているので、方針が出てから予算の用途を決めるのではなく、春から夏にかけて情報収集をします。しかし、本格的に見積もりを取ったり仕様を固めたりするのは、予算編成方針が出た後に一気に加速します。

12月~1月:財政部局による査定と復活要求

発表された方針を見て各課が11月中旬くらいに向けて財務会計システムに予算を入力し、財政課と市長のチェックが終われば予算案の公表となります。

1月に実施する「復活要求」とは、財政部局による査定で否決したとしても、市長に認められた予算のことを指します。そのため、財政課は、復活要求がある前提で多少の余裕を持って予算を組みます。「1月なら予算提案が間に合うかも」と言われるのは、復活要求を指していることが多いです。

2月~3月:予算案の公表・決議

2月になると、各首長が記者会見の形で予算案を公表します。これはよく「市政方針」と呼ばれます。予算案が否決されることは99%ないため、2月には来年度予算がほぼ確定しています。これが予算編成の流れです。

補正予算とは、本予算とは別にイレギュラーで発生する予算のことです。一般的に3の倍数月(6月、9月、12月)に実施されます。
基本は、10~12月に組んだ本予算を1年間かけて実施していきますが、新型コロナウイルス感染症対策などの、世の中の変化に対応していくために必要な予算を補正予算といいます。

 本予算だけでなく、補正予算を狙っている企業もいらっしゃるかと思います。ここで覚えておいてほしいのが、補正予算を狙う場合、可能性があるのは「9月」です。
補正予算は年3回実施されるのに、なぜ9月なのか。自治体職員にとって、補正予算の捉え方が違うからです。詳しく説明します。

【6月補正予算】
6月補正は基本ありません。新年度が始まってすぐの6月に「やっぱりこの予算も必要でした」と申請した場合、説明責任の労力がかかったり、議会での指摘を受けたりします。そのため、自治体職員は補正予算を申請しません。

【9月補正予算】
6月と比較すると申請のハードルが下がります。9月はちょうど年度の中間地点のため、「やっぱりこの予算も必要でした」という事態は起こり得ます。しかし、自治体が全額を負担する単独財源で申請するのは、私の経験上、難易度が高いです。特に市区町村は財政が厳しいため、「なぜ単独財源で補正してまでやらなければならないのか」「翌年度予算編成ではダメなのか」と問われ、説明責任が求められます。
ただし、大義名分があれば申請可能です。例えば、災害などの緊急事態や国の補助金が付いている事業は比較的に申請がしやすいと思います。9月補正予算を狙う場合、①国の補助金が付いている ②申請しうる理由を準備する 2点は必ず押さえましょう。

 【12月補正予算】
履行期間の問題で6月同様、可能性が低いです。12月に補正予算を申請した場合、議会の閉会が12月下旬となるため、実質1月に予算を使います。そのため、オペレーション期間が長いサービスは1月から業者選定から履行まで実施する必要があるため、自治体職員にとっても企業にとっても難易度が高いです。しかし、消耗品を購入する場合であれば支払いと役務提供が同時期に行われるため、申請・承認が下りやすいかと思います。

これらの理由により、補正予算を狙うのであれば、9月補正であれば可能性があります。ただし、本予算よりは申請のハードルが高いのは変わりません。押さえる2つのポイントに当てはまらない事業は可能性が低いので、本予算を狙うことに集中しましょう。

 

予算要求までの流れと予算編成方針

前章でお話した予算編成をさらに細分化して説明していきます。まず、予算要求までの流れについてです。

予算編成方針ができれば、各課が予算を組んでいきます。各課がすることを簡単に言えば、財務会計システムに予算を入力することです。お金まわりのことなので当然、見積書が必要になります。自治体に営業をしたとき、見積もりに呼ばれていない場合は、確度が低いかもしれません。来年度、そのサービスを本当に導入したいと考えているなら、その業者から絶対に見積もりを取るからです。見積もりは、何社も取る必要はありません。随意契約であれば、地方自治法のルールにより、見積もりを2社以上取る必要がありますが、まだ発注段階ではないので、見積もりは1社だけで成立する場合もあります。

予算編成方針

予算編成方針は、基本的にどの自治体も公開しています。実は全ての自治体の予算編成方針を見る必要はありません。なぜなら、どの自治体も同じような内容になっています。予算編成方針の方向性を知りたいときは2~3自治体の予算編成を見てみると良いでしょう。また、予算編成方針は実務上、自治体内部に向けてつくられているため、自治体の実態を把握することができます。

【実践】予算編成方針の調べ方・見方

予算編成方針は公式ホームページ上に公開されています。インターネット検索で「〇〇市予算編成方針」と調べてみてください。

ここからは、宮崎県小林市を例に、予算編成方針の見方について解説していきます。

予算編成方針には「国の動き」「財政状況」「予算編成方針の大筋」が書かれています。
(宮崎県小林市 令和4年度予算編成方針より抜粋)

三つの中で重要な部分が「予算編成方針の大筋」です。予算案はまず財政課が方針を提示し、各部が方針・予算案を決めていきます。ちなみに、予算編成方針が各課へ届くまでの流れは下記の通りです。

つまり「大筋を押さえて組まれた予算は財政課の審査を通りやすい」とも言えます。予算編成方針の大筋をしっかり押さえ、企画書や営業トークに盛り込むと予算申請が通りやすくなります。

 

予算編成における自治体職員の思考

予算編成方針における自治体職員の思考は大きく分けて二つあります。

原則、予算は最低限を抑える(削る)

まず、大前提にある自治体の財政状況について解説します。今回も宮崎県小林市予算編成方針と照らし合わせながら解説していきます。

(宮崎県小林市 令和4年度予算編成方針より抜粋)

これは、自治体の財政状況を説明した文章です。要約すると「予算が厳しい」という内容が記載されています。
つまり、自治体は財政が厳しい状況です。限られた財政の中で予算を決めていく必要があるため、自治体職員に目線で予算を考えると、これまで予算化されてない事業に対して慎重になってしまう傾向があります。なぜなら「一度入れたらずっと使わないといけない」事業には予算が固定化されるからです、そのため、自治体はシーリング(予算の最高限度)の概念があります

(宮崎県小林市 令和4年度予算編成方針より抜粋)

具体的には「前年比95%で予算を組んでください」といった話が予算編成方針に書かれています。5%削るだけと思われるかもしれませんが、結構大変です。

例えば、人口4万人規模の小林市でも、観光の予算が約3億円ありました。3億円から5%を引くとなると1,500万円削らないといけないので、2億8,500万円で予算組みがスタートします。翌年もシーリングがかかるので、また1,000万円単位で予算を削らなければいけない。どんどん予算が組みづらくなり、数年間で予算規模が全く違ってくるので、自治体は単価の高い固定費を嫌がります。

これらの状況により予算編成において、自治体職員は原則費用を削るという思考になります。

予算分配は相対評価で決める

「どこを削るのか」を考える上で、自治体は相対評価の観点で予算を決めていきます

仮に先ほど説明した小林市の例で考えた場合、観光分野で1,500万円の予算削減が必要です。観光分野の中でも複数の事業があり、それぞれに担当がついています。各事業の必要性を判断する上では、相対評価の観点から「事業に予算を使う意義」を説明する必要があるということです。

この相対評価は各部局だけでなく、自治体全体でも必要な観点になってきます。なぜなら、各部局からの予算編成要求を集めたのち「財政部局による査定」があるからです。

(宮崎県小林市 令和4年度予算編成方針より抜粋)

財政部局による査定には、「一件査定方式」と「枠配分方式」の2種類あります。

(茨木県取手市 とりで行政経営改革プラン2020より抜粋)

まず、一件査定方式は、各課の政策について、その内訳をひとつずつ財政課が確認していきます。それに対して、枠配分方式は、予算の範囲であれば内容を各課の裁量に任せるものです。

これまで自治体は一件査定方式を採用してきましたが、財政課が全事業に目を通していくため時間がかかってしまいます。財政課の負担軽減を考え、枠配分方式が主流になりつつあります。どちらの方式を採用しているか、見分ける方法は予算編成方針に書かれています。

違いから見える自治体営業のポイントは、方式にあったポイントを押さえることです。

 

予算編成から読み解く「重要施策(何に注力するのか)の見つけ方」

自治体の思考から分かるように、自治体は限られた予算の中で優先順位を立て、予算を決定していきます。そのため、自治体の重要施策にあたる事業でなければ、いくら提案をしても「予算がない」と言われ、検討すらしてもらえません。

重要施策は予算編成方針から読み解くことができます。その方法を宮崎県小林市予算編成方針と照らし合わせながら解説していきます。

重要施策は「総合計画」と「首長マニュフェスト」

基本方針として予算編成方針は「総合計画を重視」します。

(宮崎県小林市 令和4年度予算編成方針より抜粋)

統合計画とは、地方自治体が総合的かつ計画的な行政運営を行っていくための基本となる計画で、どのような自治体を目指すのか、目指すべき都市像を定め、そのためにどのような施策を行っていくのか、自治体が関わる様々な分野の事務事業について記載しているものです。
参考)小田原市公式ホームページ https://www.city.odawara.kanagawa.jp/faq/p06055.html

つまり「自治体の重要施策」は、総合計画を参考にすると良いでしょう。合わせて、自治体営業において「課題解決」を提案することがセオリーです。特に、コンペ形式で審査されるようなサービスであれば、総合計画の解決に繋がる提案を行うことがマストとなり、怠ると成約率が落ちるというのが私の実体験です。ただ、総合計画が実態と少し異なる部分もあるため、総合計画だけを鵜吞みにせず自治体へのヒアリングも大事です。

総合計画は10年単位でつくられます。定期的な見直しはあるものの、総合計画と現時点の状況がリンクしているとは限りません。だからこそ、状況を知るという意味で「自治体へのヒアリング」も重要だということです。とはいえ、議会等へ予算申請をする際、予算の根拠として総合計画の内容をあると自治体担当としては話しやすいので、総合計画と自治体職員へのヒアリングを踏まえて、提案をすることが大事です。

合わせて、首長のマニュフェストも重要です。第1章で説明しましたが、議会で予算案を提出する前に「市長チェック」を行います。市長の重要施策=自治体の重要施策でもあるためです。

時流の変化をキャッチする

補正予算の対象となる、災害などの緊急事態や国の補助金が付いている事業、つまり「時流」に合わせた内容を押さえることも重要となってきます。

近年では新型コロナウイルス感染症対策なども時流に合わせた内容の一つです。

 

自治体営業のポイント

予算編成を踏まえ、自治体営業のポイントは大きく二つです。

予算編成に合わせたプロモーションを行う

予算編成に合わせたアプローチは大きく三つあります。

アプローチ①『R4年度予算獲得』

これは当初予算が狙える時期です。ただし、1~3月までの執行が必須です。また、来年度予算の予算要求の〆切が11月末の自治体もあるので、来年度予算要求に間に合う場合もあります。重視するポイントは「スピード」です。ターゲット課を狙って、提案は12月頃までに終わらせておきましょう。

アプローチ②『R5年度予算獲得』

予算が内部確定しているが発注業者が決まっていない状態です。重視するポイントは「優位性」です。内部で確定している状態のため、何にどのくらい予算が決まっているかは分かりません。広く周知を行い、自治体事例を活用して「優位性」を伝えるアプローチをしましょう。

アプローチ③『R5・R6年度予算獲得』

予算が確定し、発注業者を探しており、予算が公表されている時期なのでターゲットの特的ができる時期です。また、翌年度予算の情報収集が本格的に始まります。重視するポイントは②同様「優位性」です。
自治体事例を活用した広い周知を行いつつ、リード獲得に繋がるプロモーションを実施しましょう。

アプローチの時期は三つあると説明しましたが1回だけだと、他社に取られてしまう可能性があるため、全国的に自治体マーケットでシェアを狙う企業は通年プロモーションがおすすめです。自治体職員は常に企業から提案を受けます。また、見積もり時期に覚えていてもらえないと入札にも呼んでもらえません。世の中に出ていない入札もかなりの数あるので、自治体職員に知られているか知られていないかで、状況が全く異なります
時期合わせたプロモーション方法で通年プロモーションをしましょう。

自治体の思考を押さえた情報提供

自治体は予算要求の際、根拠となる資料を作成します。この資料のことを歳出予算要求書といいます。

予算要求書には事業概要についての自由記載欄があります。予算が必要な理由、定量的な効果、総合計画の何に該当するのか、国の財源のどれを使えるのかを記入します。実は、この資料を書くのが手間なので、事業の必要性や効果は自治体職員に伝えてあげると喜ばれます

まとめ

予算編成とは?
 ・翌年度の予算計画を取りまとめること。
  毎年度秋~冬に実施され、3月の議会で確定された後、執行可能となる。
 ・補正予算を狙いやすいのは「9月」

予算要求までの流れと予算編成方針
 ・予算要求は、予算編成方針から実施事業決定▶見積書の収集▶財務会計システム入力
 ・予算編成方針は、公表されており、自治体の実態を把握することができる

予算編成における自治体職員の思考
 ・原則、予算は最低限を抑える(削る)
 ・予算分配は相対評価で決める

予算編成から読み解く「重要施策(何に注力するのか)の見つけ方」
 ・重要施策は「総合計画」と「首長マニュフェスト」
 ・時流の変化をキャッチする

自治体営業のポイント
 
予算編成に合わせたプロモーションを行う
 ・自治体の思考を押さえた情報提供

※こちらの記事は2022年10月に実施したセミナーの書き起こし記事です。

最後に

ここまで、自治体予算ついてお話してきましたが、これらの情報を事前に理解しておくことで、より効果的な方法で自治体へアプローチができます。
ただ、アプローチから商談まで自治体の特徴を押さえたアプローチをする必要があるとなると、「正直大変だな」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで当社では、今まで培ってきた自治体ノウハウ・ネットワークを活かし、自治体営業支援サービスを展開しております。

自社に合う自治体へのアプローチ方法が分からない、自治体営業が思うようにいかないなど、自治体営業に関するお悩みがありましたら、いつでもご連絡ください。

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株式会社ジチタイワークス  ソリューション営業課
マーケティング担当:中山・林・諸藤
Tel:092-716-1480
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