自治体ビジネス徹底分析!〜観光編②〜 その前に!
※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。
前回の最後に「4回に分けて高知の行政計画の読み解き方含めて自治体ビジネス観光編をお届けします」と予告しましたが、その前にお伝えし忘れていたことがありました。これからご紹介する観光編の事例は、実際に自治体から発注されたお仕事。発注形態は「プロポーザル(企画提案競争)」です。
本格的に自治体ビジネス事例を読み解くためにはプロポーザルの知識があることが不可欠。そこで今回は以降の記事への理解を深めていただくため、ちょっと横道にそれますがプロポーザル案件の読み解き方をご紹介してまいります。
「プロポーザル」とは
自治体が民間企業に業務を発注する方式の中で、エントリーする企業が増えているのがプロポーザル方式。自治体が提示した業務内容について、自社だったらどのように実施するか、考え方や実施内容を提案書に取りまとめ、その優劣で競い合います。複数の企業の中から最も優れた提案をした企業を選ぶ。それがプロポーザルです。
でも、「プロポーザルって一体どんなものなんだろう?」。経験したことがない、見たことがない方はイメージがわかないかもしれません。そこで、わかりやすい事例を一つご紹介しましょう。
2019年8月に柏崎市が公募型した「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託」。発注先の選び方はプロポーザル方式です。
なぜプロポーザルで発注先を選ぶのか
自治体は観光名所、自然資源、地元の商店紹介など様々な分野でガイドブックを発行しています。こうしたガイドブックの印刷は、最も安く引き受けてくれる会社を入札で選んで発注するのが一般的。それに対し柏崎市は、ガイドブック作成の発注先を入札ではなくプロポーザルで決めています。一体なぜでしょうか。
柏崎市がプロポーザルのルールを明記している「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託 公募型プロポーザル実施要領」にある案件の目的を見てみましょう。
市では、「防災ガイドブック(自然災害編)」を平成27年(2015 年)2月に発行し、全世帯に配布 して防災意識の向上を図ってきた。しかし、全国では毎年のように大規模災害が発生し、その度に新たな防災対策が取られ、適切な避難対策や情報伝達手段の在り方等も変化してきているため、ガイド ブックの内容を見直して最新の知見に基づいた災害時の避難行動や防災情報を伝える必要がある。 あわせて、新潟県が新たな洪水及び津波浸水想定を指定したことを受け、市では平成30年度(2018年度)に洪水・津波ハザードマップを更新したため、新たなハザードマップを市民に周知する必要が ある。 これらを踏まえ、民間事業者における専門的知見、総意工夫を反映しながら、市民目線での防災ガ イドブック作成を行うことを目的とし、本プロポーザルを実施する。
まず注目したいところはこのガイドブック作成の必要性。「最新の知見に基づいた災害時の避難行動や防災情報を伝える必要がある」ことと、「新たなハザードマップを市民に周知する必要がある」ことの2点とされていますね。ということは、新しく作成するガイドブックは盛り込む内容がとても重要。最新の情報や新しいハザードマップの情報を市民に対し「伝わるように伝える」ハンドブックでないと、市民の生命や財産が脅かされることに。
こういうお仕事は「安ければいい」という性質のものではありません。当然仕事を発注するなら「専門的知見」「創意工夫」「市民目線」について最も優れたノウハウを持っているところにお願いしたいですよね。だからこそ複数の民間企業にプロポーザル で競い合いをしてもらい、最も優れた提案をした会社に印刷も含めてガイドブック作成を発注しますよ、というわけです。
仕事の内容は「仕様書」を見よう
それではどんなガイドブック作成が求められているのでしょうか。仕事の内容は「仕様書」という文書に定められています。
柏崎市が出している仕様書「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託 仕様書」の中を覗いてみましょう。
出展)柏崎市「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託 仕様書」〈https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/material/files/group/19/siyousyo.pdf〉(2020年2月10日)
ひとことで災害といってもその種類は様々。地震、津波、風水害、土砂災害と幅広く捉えなければなりません。当然避難の方法や被災した時の対応などはそれぞれ異なるもの。この辺りをいかにわかりやすく読み手に伝えるか、災害が起こったときにすぐ動けるような行動に結びつけられるか。応募した企業の腕前が問われるところです。
自治体はこうして民間企業を評価する
一方、柏崎市サイドは複数の会社からどんな基準や考え方で一等賞を決めるのでしょうか。「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託 公募型プロポーザル実施要領」にある評価の方法を見てみましょう。
出展)柏崎市「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託 公募型プロポーザル実施要領」〈https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/material/files/group/19/siyousyo.pdf〉(2020年2月10日)
選定委員会を置いて評価項目に沿って点数評価する方法を取っています。これを見ると企画提案の項目が100点満点で配点が70点。加重倍率も実施体制や見積額の2倍に対して3倍。明らかにガイドブックの企画内容勝負なのがわかりますよね。
一方、見積もり金額の配点はどうでしょう。100点満点のうちわずか10点。つまり、仕事を取りたいが故に赤字覚悟で値引きするという作戦で頑張っても、もらえる点数は最大でも10点だけ。値引きは勝敗にはほとんど影響がないということです。
民間ビジネスに慣れている企業がよく間違える点はここ。大幅に値引きすれば採用してもらえる、という感覚で見積額を下げても必ずしも勝てない理由がお分かりいただけるのではないでしょうか。
必ず公開されている予算額
見積もりの話が出たところで、このガイドブック作成プロポーザルに対して柏崎市が用意した予算はいくらなのでしょうか。実は自治体が出しているプロポーザルの殆どが実施要領などに予算価格を明記しています。
柏崎市のこの案件、予算額は600万円。
プロポーザルに参加を検討する場合は、まず仕事の内容と予算額を確認し、利益を出せる案件なのか確認すると良いでしょう。
受注した企業名や選定理由が公開されていることも
さて、この案件で一等賞を勝ち取った会社は一体どこなのか。気になりますよね。
自治体によって開示・非開示はまちまちですが、柏崎市の場合は選定企業を選定理由とともに公式ウェブサイトに開示しています。
プロポーザル案件の事例紹介、最後に柏崎市の公式ウェブサイトから結果をご紹介しておきましょう。
出展)柏崎市「柏崎市防災ガイドブック作成業務委託公募型プロポーザル審査結果」〈https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/sangyo_business/nyusatsu_keiyaku/proposal/14693.html〉(2020年2月10日)
まとめ
最後にプロポーザルの概要をまとめてみましょう。
・プロポーザルとは、価格ではなく提案内容の競い合い
・仕事の内容は「仕様書」に書いてある
・企業を選ぶ評価基準は項目ごとの点数評価
・予算額は開示されていることが多い
・勝った企業名が公開されることも
今回お伝えしたプロポーザルの知識を踏まえ、次回は今度こそ高知市の観光振興計画を題材に、観光関係ビジネスを展開する上での押さえどころや発注されている仕事の種類についてご紹介してまいります。
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