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  1. 自治体職員とのコミュニケーション 〜話が転がらないのにはワケがある〜

自治体職員とのコミュニケーション 〜話が転がらないのにはワケがある〜

自治体職員とのコミュニケーション 〜話が転がらないのにはワケがある〜

※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。

皆さん、こんにちは。
株式会社LGブレイクスルー代表取締役、古田智子です。
前回コラムからは、公民共創に欠かせない自治体職員さんとのコミュニケーションをテーマにしています。

自治体職員とのコミュニケーション 〜誰が一番「えらい」人?職員の役職〜
民間と違ってややこしい自治体の役職

自治体職員とのコミュニケーション 〜提案書が刺さらないのにはワケがある〜
刺さらない提案書に共通している3つのポイント

さて今回は、職員さんとの対話で民間が感じるもろもろについて、背景などをお話ししていきましょう。

「ラポール」形成に取り組むものの・・・

民間企業の営業担当者が、研修や先輩からのOJTで必ず学ぶ言葉の一つ、「ラポールの構築」。
元々は海外の言葉ですが、信頼関係を作るという意味合いですよね。接遇研修などで学んだ方も多いと思います。営業担当者は、商談先の担当者とまずは仲良くなるために、話が弾む様々な時事の話題や趣味の話まで投げかけて、関係づくりのきっかけをつかみます。

ところが、これが自治体職員がお相手だと、あれ?とちょっと違和感を感じることがあります。対話ができる関係を作ろうと笑顔であれこれ話題を作ってコミュニケーションを取ろうとするのですが、とにかく反応が見えない。話題が弾まない。話題が広がっていかない。

自社の製品やサービスについて提案しても、「上司に確認してお返事します」。確認するのはホウレンソウ上当たり前なのですが、何かリアクションがあってもいいのでは?

ちょっと勝手が違う先方の対応に、だんだん精神的に焦ってきます。一体なぜ?何か先方が気を悪くすること言ってしまったのでは?
そんな不安に囚われながら、商談に集中できず、次の展開についての約束を取り付けられないまま終わってしまう。よく自治体営業初心者の担当者の方がつまづく課題です。要は、「話が思うように転がらない」のです。

話が転がらない3つの理由

自治体職員さんのこうしたリアクションに直面すると、「自治体職員は硬い」と決めつけてしまいがち。でも果たして本当にそうでしょうか。実は、彼らが最初お世辞にもフレンドリーに対応してくれないのには、背景がちゃんとあるのです。話が転がらない3つの事情、それは次のようなものです。

① 地方公務員法

自治体職員さんの仕事の細かいルールを決めている地方公務員法。実はこの法律の中に、民間企業からするととてもイメージができない条項があります。

それは、「上司の命令に従わなければならない」という条項。

商談の席で、自治体職員さん個人がどんなに「素晴らしい製品だ!ぜひ導入したいなあ」と思っても、まずは上司に報告してからでないといいも悪いも、見通しでさえも表明しにくい現状があります。そんなわけで、どうしても「上司に確認してお返事します」という素っ気無いリアクションになりがち。この辺りの事情は予備知識として覚えておくと、凹むことなく話を進めることができそうです。

② コンプライアンス

地方自治体は、公平性・公正性・透明性を非常に重視していることは、今までのコラムでもお話しした通りです。ですから、どんなに優れた製品やサービスを展開できていても、あなたの会社だけ特別扱いするわけにはいかない辛い事情があるのです。

原則は、どんな企業でも分け隔てなく公平に対応しなければならないのが地方自治体。言い換えれば、特定の企業に対してだけ有利になる扱いをするのは固く禁じられています。だからこそフェアな調達プロセスが決まっているわけなのですが・・・。

もし、商談の段階で可能性があるようなお話を民間企業にしてしまうと、その後入札や企画競争でオープン勝負になる可能性が高いとしたらどうでしょう。そうなったときに「何回も通って情報提供して提案もしたのに、なんで他の会社も入ってくるのか」と企業から不満をぶつけられ、その事情を申し訳なさいっぱいで説明しなければならない。

こういう事態を避けたい、という自治体職員さんの心理をしっかり理解しましょう。

③「あなたから買いたい」が通じない

民間企業の営業担当者は、先輩や上司、あるいは会社が企画する営業研修などで叩き込まれる概念があります。
それは、「あなたから買いたい、と言わせなさい」。

確かに製品やサービスの技術開発競争で、製品スペックはどんぐりの背比べになってしまうことも多い昨今。顧客が購買の意思決定する決定打は、どうせ同じようなものを買うなら、この人から買いたい、と言う個人の人間的魅力や信頼性だから、という考え方です。だから担当者の人間的魅力や信頼性を伝えるコミュニケーション表現を営業研修で磨き上げるというわけです。

さて、地方自治体の商談であなたから買いたい、これが通じるでしょうか。

答えは、「NO」ですよね。

個人的にどんなに素敵なビジネスパーソンであっても、そして自治体職員が心底「この人から買いたい!」と思ったとしても、避けて通れないのが予算のルールと調達プロセス。ほとんどの場合、他社との競い合いを避けて通ることができません。だから、自治体職員に対して「あなたから買いたい」と言わせるためのコミュニケーション、むしろ刺さらなくて当然。それが普通と思いましょう。

対話のネタではなく有効な情報共有で

だったらどのように自治体職員との信頼関係を作っていけば良いのか。何回かコラムでも触れている通り、その自治体の部署で取り組んでいる施策・事業の展開に参考になったり、役に立つ情報を提供すること。

個人的な趣味の話で盛り上がるよりも、そして例えリアクションは分かりにくくても、彼らに役立つ情報を定期的に提供してくれるあなたの会社に対して「この会社から買いたい!でも表立っては言えない!」と職員さんは思ってくれるはずです。

自治体からの信頼を得たかったら、コミュニケーション力ではなく、あくまでも相手に役立つ情報で。たとえ話は楽しく転がらなくても、仕事の結果は楽しいものになるはずです。

 


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行政マガジン『ジチタイワークス』

株式会社ジチタイワークスが発行する、自治体・関係団体向けの情報誌です。元自治体職員の弊社社員が当時抱えていた「地域のために何かをしたいのに情報が足りない」といった悩みを解決したいという想いから創刊され、全国各地の自治体の先進事例やユニークな事例を取り上げ、業務改善のヒントとアイデアを掲載しています。
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まとめ

ラポール形成のためには、話術ではなく情報。やはり民間とはちょっと違いますよね。
次回も自治体職員とのコミュニケーションの現場対応、引き続きお伝えして参ります。どうぞお楽しみに。

 

株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子


1990年慶應義塾大学文学部卒。流通業、建設コンサルタント業を経て、1998年に総合コンサルティング会社入社、トップ営業に。コンサルタントとしても中央省庁や自治体受託業務の案件獲得活動から受託後のプロジェクトマネジメントまで一貫して携わり、多岐にわたる領域の公共事業に従事。
2013年2月、(株)LGブレイクスルー創業。企業と自治体が対等なパートナーとして連携し解決を図る社会の実現をミッションとし、自治体調達案件の勝率を高める我が国唯一のソリューション事業を展開。企業研修実績、コンサルティング実績も多数。
著書に『地方自治体に営業に行こう!!』(実業之日本社)『民間企業が自治体から仕事を受注する方法(日本実業出版社)』がある。

自治体ビジネスドットコム:https://jichitai.biz

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