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  1. BtoLGマーケティングの実務 〜事業環境分析に使う資料の調べ方③〜

BtoLGマーケティングの実務 〜事業環境分析に使う資料の調べ方③〜

BtOLGマーケティングの実務 〜事業環境分析に使う資料の調べ方③〜

※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。

皆さん、こんにちは。
株式会社LGブレイクスルー代表取締役、古田智子です。
今回は3Cの「Competitor」の後半、そう。前回勿体ぶって先送りにした「報開示請」について詳しくご説明してまいります。

BtoLGでは、ライバル企業の情報を合法的に入手する方法がある

皆さんの展開している民間ビジネスで、クライアント企業様に「ライバル会社の出している企画書見せてくれませんか」と申し出たら見せてもらえるでしょうか。まず無理でしょう。それどころか「一体何を言ってるんだろうこの会社」と思われ、かえって会社の評判を落としかねません。

一方BtoLGの場合、なんとクライアントである自治体に「企画書見せてください」と申し出ることができてしまうのです。
そのための手続きが「情報開示請求」。とかく難しいと思われがちな3Cの「Competitor」の情報を集める上で、大変有効な手立てとなります。

情報開示請求とは

皆さんは「情報公開法」という法律をご存知でしょうか。
1999年に制定され、2001年に施行されました。比較的新しい法律ですね。この法律では、国家の安全保障や企業機密、個人情報に関するものは例外として、行政機関が保有する情報の原則公開を義務付けています。

そもそも情報開示請求とは、この法律に基づいて国民が「知る権利」を行使するためのもの。自治体を含め、ほとんどの行政機関で情報開示を請求するための手続きが設けられているのは、この法律に則ったものなのです。

どんな資料が調べられるのか

さて、この情報開示請求。自治体に請求すると、一体どんな資料が調べられるのでしょうか。
地方自治体で原則として開示請求の対象となるものは、公文書管理法で規定されている「行政文書」のカテゴリーになります。

行政文書出展:内閣府〈https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/about/bunsho/bunsho.html

ライバル会社が入札やプロポーザルで自治体に提出した文書は、どのような内容であっても「行政機関の職員が職務上取得した文書」に該当しますよね。だから情報開示請求の対象となり、請求すれば入手することができるというわけです。

どんな手続きをすればいいのか

さて、気になる情報開示請求の手続き。
「法律に基づいて情報公開を請求する」なんて、ものすごく手続きが難しそう・・・そんな印象を受けてしまいがち。

ところが、です。

手続きは、自治体の公式ウェブサイトからA4サイズ1枚の申請書をダウンロードして記入し、提出するだけ。想定外の易しさで、時間にすると10分もあればあっけなく終わってしまいます。
申請書は「情報公開請求書」などの名称で呼ばれており、自治体ごとに体裁が微妙に異なるもののほぼ似たような様式。記入後は指定の窓口に直接提出するか、郵送・ファックスでも受け付けてくれます。

代表的な記入項目例を以下にご紹介しましょう。

請求日
請求した日付を記入しましょう。西暦か元号かは、指定に従って記入しましょう。

請求先
請求する情報の長となります。ほとんどの場合様式にすでに記載されています。

請求者
法人の場合は事業所の郵便番号・住所・法人名・代表者氏名・連絡先を記入します。

情報を特定するために必要な事項
請求する資料の名称を正確に記載します。例えば、特定の入札案件に応募した企業の企画提案書であれば、件名を正確に記載し、その案件で「特定された企業が提出した企画提案書他資料一式」などのように、受け付けた行政側が何を開示すればいいのか具体的にわかるように書きましょう。

請求の区分
ここは、「閲覧」「視聴」「写の交付等」となっているので、該当するキーワードにマルをつけます。請求した資料のコピーを入手したい場合は「写しの交付」にマルをつけましょう。

参考までに、東京都杉並区の情報公開請求書の記入例のリンクを共有しておきます。
出展:杉並区「情報公開請求書」https://www.city.suginami.tokyo.jp/res/projects/default_project/_page/001/006/208/20200304jouhoukoukaiseikyuusyokinyuurei.pdf

費用はどれくらいかかるのか

気になる請求手数料ですが、ほとんどの自治体が無料。ただし写しの交付の場合はコピー代(モノクロコピー1枚10円程度)郵送代などの実費がかかります。詳しい費用は請求する自治体WEBサイトを確認しましょう。

請求後、資料が届くまでどのくらいの時間がかかるのか

多くの場合、申請書が受理された日の翌日から2週間以内に「公開できるかどうか」を決定し通知されます。公開できないとしたら、その理由もお知らせがあります。申請書を提出してすぐにお返事が来るものではないことを知っておきましょう。

競合他社のどんな資料を入手すべきか

皆さんの会社で3C分析上「Competitor」として想定している企業があるはずです。その会社の自治体での仕事ぶりがわかる資料を入手するのが基本ですよね。
というわけで、入手資料としておすすめなのが次の3点です。

① 企画提案書

競合他社がプロポーザルで案件を獲得している場合、提出された企画提案書は入手したい資料の筆頭です。
特にその企業がどんな事業実施方針で何を強みとしているのかについては、視点を変えると自治体がどんな企業に発注したいのかを把握することにつながります。

② 落札結果

競合他社が競争入札で落札した案件の結果資料を入手しましょう。製品を自治体に売りたいビジネスの場合は、他社の落札価格を知ることが価格戦略を立てる上で重要な情報になります。

③ 業務実施報告書

自治体からの仕事は、製品の納入であっても事業の受託であっても、業務が求められた内容の通りに実施されたか自治体側からの確認があります。資料で確認したり、面談で確認したり方法は業務内容によって異なりますが、いずれのパターンであっても業務が完了したことを客観的に示す内部の報告書類があります。
この報告書類は他社の製品や仕事の内容を知る手がかりとなりますので、こちらも入手しておきたい資料の一つです。

請求の際に注意することは?

情報開示請求の手続き、いかがでしたでしょうか。
手続きそのものは誰でもできる簡易なものだということがお分かりいただけたかと思います。
一方で、請求の際に気をつけておきたい点も。
代表的な注意点は3つあります。

① 請求できる人・法人が自治体によって異なることがある

自治体によっては、請求できる人・法人をその地域に在住・所在していることを条件にしているところもあります。公式WEBサイトなどでまず確認しておきましょう。

② 請求して入手した資料が「墨消し」処理されていることがある

これがいわゆる「海苔弁」。
例えば競合他社の企画提案書に開示請求をかけると、その企業に自治体から資料に開示して都合の悪い部分があるかどうか確認の連絡が入ります。原則は個人情報や知財管理に関わるものは開示できないので、自治体側が念のための確認をするわけですね。
例えば皆さんが開示請求をかけられた側だとしたら、どう対応するでしょうか。なるべく開示したくない!と思うでしょう。そうした場合は、「個人情報や企業の知財管理が含まれているから」を理由に、開示すると都合が悪い箇所を真っ黒に塗りつぶすことができます。これが「墨消し」、通称「海苔弁」と言われるものです。そのようなわけで入手した企画書が海苔弁状態で、どのページを見ても真っ黒になっていることも。

こちらは情報開示請求をかけて入手したある会社の企画提案書、組織体制の部分ですが、こんな感じに真っ黒になっていました。

でも、がっかりするのは早計です。たとえ海苔弁であっても、企画書の構成や塗りつぶされていない部分から類推できる情報は意外と多いもの。
上記に共有した事例は企画提案書の組織体制図ですが、組織体制は図で示すことや、体制の表現の仕方などは墨消しになっていても参考になるものです。また、自社が開示請求をかけられた時の対応の目安にもなるでしょう。

③ 請求理由を自治体側から聞かれることがある

ごくまれに、申請した後に自治体側から電話がかかってきて「請求の目的は何ですか」と聞かれることがあります。
皆さんならなんと答えますか。「ライバル会社の分析に使います」なんて、もちろん口が裂けても言えません。
そんな時は、こう答えましょう。「行政研究です。」どんな行政研究ですか?とさらに言われたら、「行政の研究です」と返しましょう。それ以上のことを言う必要はありませんし、正当な理由を言わなければ開示できない決まりはありません。行政研究の一点張り、これを覚えておいてください。

まとめ

今回は、情報開示請求にフォーカスして具体的に共有させていただきました。今回で事業環境分析での情報の調べ方は一通り終わったことになります。
次回からは、いよいよSTPのお話。ターゲット自治体の絞り込み方に踏み込んでいくとしましょう。どうぞお楽しみに。

なお、株式会社ジチタイワークスでは、全国1,788自治体、全ての課に無料配布している行政マガジン『ジチタイワークス』をはじめ、自治体への営業活動を支援するサービスをご提供しています。
「自治体への認知拡大を図りたいが方法が分からない」「自治体との取引実績ができたため、他自治体にも広げたい」などの課題に対し、自治体営業に強い株式会社ジチタイワークスが解決のお手伝いをいたします。

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著者

株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子


1990年慶應義塾大学文学部卒。流通業、建設コンサルタント業を経て、1998年に総合コンサルティング会社入社、トップ営業に。コンサルタントとしても中央省庁や自治体受託業務の案件獲得活動から受託後のプロジェクトマネジメントまで一貫して携わり、多岐にわたる領域の公共事業に従事。
2013年2月、(株)LGブレイクスルー創業。企業と自治体が対等なパートナーとして連携し解決を図る社会の実現をミッションとし、自治体調達案件の勝率を高める我が国唯一のソリューション事業を展開。企業研修実績、コンサルティング実績も多数。
著書に『地方自治体に営業に行こう!!』(実業之日本社)『民間企業が自治体から仕事を受注する方法(日本実業出版社)』がある。

自治体ビジネスドットコム:https://jichitai.biz

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