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  1. 官民連携の形のひとつ「包括連携協定」って何? ~そのメリットと課題・解決策~

官民連携の形のひとつ「包括連携協定」って何? ~そのメリットと課題・解決策~

※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。

皆さん、こんにちは。
株式会社LGブレイクスルー代表取締役、古田智子です。
今回のコラムでは、巷でよく耳にする自治体と企業の「包括連携協定」に関してご紹介していきます。

包括連携協定とは

「包括連携協定」の基本の考え方を理解するために、まずは言葉を分解してみましょう。

包括:全てをまとめること。
連携:官公庁と民間企業などが互いに連絡を取りながら物事をおこなうこと。
協定:官公庁と民間企業などが協議して決めること。継続的・安定的な関係を結ぶこと。

それぞれを分解すると、官公庁と民間企業などが分野を限定せずに、連携して動くのかな、と少しイメージができたのではないでしょうか。

この包括連携協定の特徴のひとつは、「協定」という方式にあります。
上の通り、継続的・安定的な関係を構築し、地域の課題についてお互いが協議し、物事を進めていくのですが
これは決して、官公庁と民間企業などを強く「縛る」方式ではない、ということです。

だからこそ、お互いの意識のすり合わせが重要にもなってくるところです。この辺りは後半でお話ししたいと思います。

 

どんな包括連携協定があるのか

自治体と民間企業の包括連携協定は10年以上前から締結されており、当時は主に災害時の締結が多い状況でした。しかしながら現在は様々な地域課題に対して企業が提案しその申し入れを自治体が検討する形で結ばれる事例がほとんどです。

では、より具体的にイメージしていただくために、実際に包括連携協定を結んでいる自治体と企業の事例をいくつかご紹介しましょう。

① 福岡市と民間企業の包括連携協定

福岡市では、地域の一層の活性化や市民サービスの向上を目指して様々な企業と、幅広い分野で包括連携協定を締結しています。
例えば、株式会社ローソンとの取り組み内容は以下の通りです。

1. アジアを見据えた観光振興に関すること
2. 市の環境政策に関すること
3. 地産地消や地域経済の活性化に関すること
4. 地域の安全・安心の確保や災害時の支援に関すること
5. 子育てや青少年育成の支援に関すること
6. 高齢者・障がい者の支援に関すること
7. その他市政の推進や市民サービスの提供に関すること

(出典:福岡市HPより https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/machi/001.html )

他にも、福岡ソフトバンクホークス株式会社、イオン株式会社など多くの民間企業と締結しています。
締結先企業の情報は、協定書の内容とともに福岡市のホームページに掲載されています。
初めての方はぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

② 長野県小布施町と民間企業3社との包括連携協定

こちらはより具体的な領域に絞った形の包括連携協定です。

長野県小布施町は1970年代以降、景観を軸とした「まちづくり」からはじまり、協働を生み出す「まちづくり」を推進してきている人口約1.1万人のまちです。

2020年1月発表の第六次総合計画で掲げた「新たなまちづくり」の施策実現に向け、2020年9月23日に、以下を目的とした包括連携協定を民間企業3社(株式会社Goolight・自然電力株式会社・株式会社シグマクシス)と締結しました。

【目的】
●電気・水道・通信などの各領域に知見と技術を持つ民間企業との協業により、
総合計画の目標を実現可能な行動計画に落とし込むこと
●電気・水道・通信などの各領域を個別に検討するのではなく、領域横断での包括連携協定と
することで、整備費用の適正配分と、施策間の相乗効果の最大化を実現すること

(出典:小布施町プレスリリースより https://www.town.obuse.nagano.jp/fs/2/4/9/8/5/_/renkeikyoutei.pdf

このコラムをご覧の方々は既にご存知かもしれませんが、自治体は基本的にお困り事ごとに課が存在し、その課ごとに課題解決のための施策を事業化・実施していきます。

しかし、課題によっては課の垣根を超えて解決した方が望ましいケースもあり、特に課題が多様化している現代社会においては領域横断的に課題解決に取り組むことはもはや必然ともいえるかもしれません。

小布施町ではまさに、民間企業の力を借りて環境に配慮したインフラの検討を領域横断で行うことで、無駄を省き、また相乗効果を生み出すことを期待されているということですね。

今後、動きが本格化してくるところもあると思いますのでぜひ注視していきたいところです。

 

包括連携協定 民間企業にとってのメリット

ここまで、具体的な取り組みをご覧いただいたところで地域にとってのメリットは多少イメージしていただけたのではないでしょうか。

では、締結する民間企業にとってのメリットは何でしょうか?

それは、包括連携協定を締結することで、「入札やプロポーザルを経ず、特定の企業が自治体が政策決定を行う段階から、地域課題の解決に関わることができる」という点にあります。

通常、公告された案件は、公告資料をご覧になればお分かりの通り仕様や予算が既に決められており、自治体の方であらかじめ「やって欲しいこと」が明確になっている状態です。

しかし、民間企業の中には、その公告資料を読んで「もっとこうすれば成果が出るのに…!」
「違う方向性の方が費用対効果が良いのに…!」と変えられない仕様を見つめて地団駄を踏んだことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、包括連携協定の出番です。
包括連携協定の枠組みの中で、政策決定を行う段階から自治体と一緒に課題の解決方法について適切な議論・検討ができていれば、公告された案件の仕様も変わってくる可能性があるということです。

また、自治体との議論・検討を経ることで公告された案件に隠された自治体の真のニーズを的確に捉えることができ、その結果他社との優位性を訴求でき、勝率が高まるというメリットもあります。

 

包括連携協定 締結における課題

こんなにいいことずくめのように見える包括連携協定ですが、では、すべての包括連携協定が双方にとってうまくいっているのでしょうか。

実は、残念ながら必ずしもそうだとは言い切れないのが事実です。
包括連携協定を締結する際には越えるべき大きな2つの壁があると言われています。

  • 協定書の内容が曖昧であること
  • 自治体と企業の、協定締結への期待値のすり合わせができていないこと

包括連携協定後、うまくいかないケースの多くはこれに該当すると言っても過言ではありません。
曖昧な協定書であったり、お互いの期待値のすり合わせができないまま締結完了してしまうと、大きなすれ違いが生じてしまいます。

民間企業としては、「ヨシ!これで仕事がくるだろう!」と果報は寝て待て状態になり、協定締結後は放置…
自治体としては、「ヨシ!これで色々サポートしてもらえるだろう!」と待ちの状態、もしくは「無料で色々やってもらえるに違いない!」とアグレッシブにお願いをして民間企業を困らせたり…

結果、お互い「何もしてくれない!」とか「こんなはずじゃなかった!」と不満が噴出してしまう、という事態に。
せっかく締結したのであれば、こんな事態は避けたいところですよね。

 

包括連携協定 締結するならこう進めよう

では上記の2つの壁を打破するにはどうすれば良いのでしょうか。それは以下の2つの点を留意することに尽きると考えられます。

協定の内容は曖昧にせず、

  • アクションプランにまで落とし込むこと。
  • 自治体の総合計画とリンクさせること。

この2つの点をおさえることで、

自治体にとっては、大事な「総合計画」という方針に沿って民間企業の力を借りることができ、より効果的な事業の実施が可能となる。また、協定の内容が方針に沿っているので庁内調整も進めやすくなる。

民間企業にとっては、協定の内容を、持ち出しではなく、自治体の予算の中で実施ができる。そして自社の力を、利益を出しながら、地域課題の解決のために存分に発揮できる。

といったことが実現可能となるわけです。

まとめ

ぜひ、包括連携協定の締結をこれからお考えの方は締結そのものをゴールにするのではなく、上の点について自治体としっかり議論し明確にした上で締結されることをおすすめします。

また、すでに締結している協定が形骸化してしまっている場合でも、改めて自治体との議論の場を設け仕切り直しなどをしてはいかがでしょうか。

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株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子


1990年慶應義塾大学文学部卒。流通業、建設コンサルタント業を経て、1998年に総合コンサルティング会社入社、トップ営業に。コンサルタントとしても中央省庁や自治体受託業務の案件獲得活動から受託後のプロジェクトマネジメントまで一貫して携わり、多岐にわたる領域の公共事業に従事。
2013年2月、株式会社LGブレイクスルー創業。企業と自治体が対等なパートナーとして連携し解決を図る社会の実現をミッションとし、自治体調達案件の勝率を高める我が国唯一のソリューション事業を展開。企業研修実績、コンサルティング実績も多数。
著書に『地方自治体に営業に行こう!!』(実業之日本社)『民間企業が自治体から仕事を受注する方法(日本実業出版社)』がある。

自治体ビジネスドットコム:https://jichitai.biz

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