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BtoLGマーケティングの実務 番外編 〜自治体でオンラインミーティング対応が進まない、たった一つの理由〜

自治体でオンラインミーティング対応が進まない、たった一つの理由

※本記事は株式会社LGブレイクスルー様に寄稿いただきました。

皆さん、こんにちは。
株式会社LGブレイクスルー代表取締役、古田智子です。

今回のテーマは、BtoLGマーケティングから離れた番外編、誰もが一度は感じたことがあるこちらのトピック。

「自治体の職場ではなぜオンラインが進まないのか」。

自治体は組織の動きが遅いから?自治体は民間企業に比べてイノベーションが遅れているから?そうした単純な話では片付けられない「深い訳」について、お話してまいりましょう。

withコロナと自治体とのコミュニケーション

新型コロナウイルスの感染拡大。亡くなられた方、そしてご家族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。
また、現在闘病中の方とご家族の方々には、心よりお見舞い申し上げます。

今回の新型コロナが自治体ビジネスで活躍する企業に与えた直接的な影響を挙げるとすると、筆頭は「自治体職員となかなか会えない」こと。新型コロナで大打撃を受けた地域経済の支援策や住民への給付金手続きなどで一部の現場が超多忙になったことも原因の一つですが、もっと大きい原因が「オンラインでやりとりができない」こと。

民間企業の自治体ビジネス担当者は、基本的に自治体へのアプローチをリアル訪問で進めてきました。ところが新型コロナの感染拡大で2020年の4月以降、外出や遠方への移動の自粛などで自治体も民間企業との面談は受付できないという状況に。

「だったらオンラインに切り替えられないか」。

そう。こうした状況に対して民間ビジネスの現場では、zoomやGoogle Meets、Microsoft Teamsなどのオンラインツールに商談の現場を次々に切り替えてリカバリーしていますよね。同じように地方公共団体という組織も社会情勢の変化に合わせ、オンラインに切り替えられるはず。そう思った民間企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

ところが、ほとんどの自治体がオンラインツールの導入には「No」。つまり、オンラインでの打ち合わせや商談がほぼできない状況に陥ったわけです。

多くのオンラインツールが無料もしくは低価格で使え、扱ったことがない初心者にも操作は容易です。なのに自治体職員は「オンラインでのミーティングはできない」の回答一択。その理由を尋ねると、多くの場合「インターネットへの接続ができないから」と返事が返ってきます。

民間企業にしてみたら、インターネットを使わずに日々の仕事を成立させることなんてあり得ないこと。なのにインターネットなしで仕事しているなんて、自治体のこうした「塩対応に見えてしまう対応」が、「自治体は遅れている」「対応のスピードが遅い」「民間企業と比べてあらゆる面で劣っている」というような印象をより強くしてしまった感があります。

なぜ、自治体はこんなにオンライン導入に後ろ向きなのでしょうか。

オンラインでやりとりできないのには理由がある

自治体のオンライン導入が進まないのには、たった一つの理由があります。

それは「総合行政ネットワーク」。
英語表記「Local Government Wide Area Network」の頭文字を取って、略称で「LGWAN(エルジーワン)」と呼ばれています。これは一体どういうものなのでしょうか。

地方公共団体情報システム機構 総合行政ネットワーク全国センターが、平成30年4月にリリースしている資料「総合行政ネットワーク(LGWAN)の概要」を見てみましょう。

LGWANは地方公共団体の組織内ネットワーク(庁内LAN)を相互に接続し、高度情報流通を可能とする通信ネットワークとして整備し、地方公共団体相互のコミュニケーションの円滑化、情報の共有による情報の高度利用等を図ることにより、各地方公共団体と国の各府省、住民等との間の情報交換手段の確保のための基盤とすることを目的とした、高度なセキュリティを維持した行政専用のネットワーク(インターネットから切り離された閉域ネットワーク)です。

資料の原文をそのまま引用していますので、一文が長いのはご容赦ください。要はざっくりまとめると、

「各府省・地方自治体の庁内LANを相互につなぐ行政専用のネットワーク」

ということになりそうです。自治体組織の庁内LAN、他の自治体や中央省庁と全部つながっているんですね。平成13年度から都道府県が、平成15年度から全国市区町村が接続し、既に5年ものあいだ運用がなされています。

さて、注目したいのがこのフレーズ。

「インターネットから切り離された閉域ネットワーク」

そう、自治体が日常の仕事で使っているこのLGWANは、私たちのビジネスや日常生活に欠かせない情報インフラであるインターネットから完全に切り離されているシステムなのです。

インターネット接続PCは限られている

上記で引用したLGWANの図解はこんな感じです。

出典)総合行政ネットワーク(LGWAN)の概要:平成30年4月、地方公共団体情報システム機構 総合行政ネットワーク全国センター

注目していただきたいのが、こちらの図の下の部分。インターネット接続がシャットアウトされていますよね。そう、まさにLGWANのこの部分こそが、自治体がインターネットに接続したオンライン業務になかなか移行できない理由です。

インターネットに接続してオンラインで外部とやり取りする必要性、もちろん職員の方々も重々承知しています。ですが、このLGWANのシステムがあるが故、そもそもパソコンがインターネットに接続していないのです。だからオンラインミーティング、やりたくてもできないというのが実情なのです。決して自治体組織としてのイノベーションが遅れているから、というわけではないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

なぜここまで自治体が外部のインターネット接続に対して慎重なのか。もうこれは当たり前に想像ができることなのですが、情報漏洩のリスクへの対応です。

国や自治体が扱う情報は、個人情報はもとより国家の安全保障上重要な機密まで。民間が扱う情報とは異なり、漏洩すると直接個人の生命や財産が脅かされる、あるいは国家の安全が損なわれる可能性も。例えば個人の住所の情報が漏洩したりすると、ストーカーによる犯罪行為に結びつくことだってあるわけです。

だから、こうした国や自治体が扱う情報が漏洩するリスクは、なんとしても限りなくゼロに近づけなければなりません。
インターネットへの接続をシャットアウトし、LGWANという堅牢な情報セキュリティ体制を敷く閉鎖されたネットワークの中で公務に取り組むことは、私たちの生活の安全・安心を支える上で欠かせないものなのです。

とは言いながらも、インターネットに接続できないと変化のスピードが速い社会への対応上諸々不都合というケースはあちこちで当然のように起こります。多くの自治体が対応策として、職場にインターネットに接続し、かつ自治体内部のシステムにはアクセスしていないパソコンを限られた台数(多くの場合部署に1台〜2台)用意することで対応しています。

何れにせよ、「民間企業での当たり前が、自治体の職場では当たり前ではないこともある。」この辺りの民間と自治体との違いは、何もオンライン対応に限ったことではなく、あらゆる部署の仕事の中で存在しています。

民間企業として自治体との良好なビジネスパートナーシップを構築したいのであれば、まずはこうした自治体の事情や特性をよく知ること。民間の価値観や固定概念で自治体の仕事を評価し判断すると、あらゆる仕事の場面で情報のミスリードが発生する原因になります。自治体の公務の現場にもっと関心を寄せ、私たち民間とは異なる彼らの仕事の現状を知る努力をしていきたいものです。

 

まとめ

今回は自治体に導入されている閉じられたネットワーク「LGWAN」についてご紹介しました。次回は再びBtoLGのマーケティングにお話を戻していきましょう。
どうぞお楽しみに。

株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子


1990年慶應義塾大学文学部卒。流通業、建設コンサルタント業を経て、1998年に総合コンサルティング会社入社、トップ営業に。コンサルタントとしても中央省庁や自治体受託業務の案件獲得活動から受託後のプロジェクトマネジメントまで一貫して携わり、多岐にわたる領域の公共事業に従事。
2013年2月、(株)LGブレイクスルー創業。企業と自治体が対等なパートナーとして連携し解決を図る社会の実現をミッションとし、自治体調達案件の勝率を高める我が国唯一のソリューション事業を展開。企業研修実績、コンサルティング実績も多数。
著書に『地方自治体に営業に行こう!!』(実業之日本社)『民間企業が自治体から仕事を受注する方法(日本実業出版社)』がある。

自治体ビジネスドットコム:https://jichitai.biz

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