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  1. ネーミングライツとは?自治体・企業に及ぼすメリット

ネーミングライツとは?自治体・企業に及ぼすメリット

「フルキャストスタジアム宮城」や「フクダ電子アリーナ」など、スポーツ施設の中には企業名がつけられていることもあります。「東京スタジアム」から「味の素スタジアム」へ変更など、急に企業名の入った名前になると違和感を覚える人もいるかもしれません。

しかし、これらは「ネーミングライツ」と呼ばれ、スポーツ施設などにとっては運営資金調達のための重要な手法です。

今回はネーミングライツについての詳しい説明と、自治体や企業に及ぼすメリットについて解説していきます。

名前の売買?ネーミングライツとは?

そもそも「ネーミングライツ」とは何なのか、詳しく見ていきましょう。

ネーミングライツとは「公共施設の名前を付与する命名権と、付帯する諸権利のこと」をいいます。具体的にいうと、スポーツ施設などの名前に企業名や社名ブランドをつけることであり、公共施設の命名権を企業が買うビジネスです。

ネーミングライツがはじまったきっかけは、1973年にアメリカのバッファローにあるアメリカンフットボールチームのスタジオ名称を、リッチプロダクツコーポレーションが買い取ったのが始まりでした。これにより、買取会社としてはスタジアムに来る多くの観客に会社名のインパクトを持ってもらうメリットがあり、スタジオとしては施設建設費用や維持費などを買取会社に請け負ってもらうメリットがあります。

その後は1990年代から北米のプロスポーツ施設を中心に、同様な流れが急速に拡大しました。ドイツの有名なサッカーチームであるシュトゥットガルトのサッカー競技場も、いまでは「メルセデスベンツアリーナ」と命名されています。日本でも多くのスポーツ施設が運営資金のための有効な手段として注目しはじめ、最初にネーミングライツが行われたのは2003年の「東京スタジアム」が「味の素スタジアム」に変更されたものです。

これをきっかけに、日本全国における多くのスポーツ施設がネーミングライツを導入し始めました。

莫大な宣伝効果

ネーミングライツを導入することでどういったメリットがあるのか、まずは企業側から見ていきましょう。

それは自治体の公共施設には人がたくさん集まるため、「企業の宣伝になる」ことがあげられます。先ほどの味の素スタジアムを例に見ると、ネーミングライツを取り入れる前は「東京スタジアム」といった施設名でした。しかし、ネーミングライツを導入してからは「味の素スタジアム」に名称が変更されたため、スタジアムでイベントが開催されるたびに味の素スタジアムを多くの人が連呼することになります。「待ち合わせ場所は味の素スタジアム」「次の試合は味の素スタジアム」、これは企業にとって非常に大きな宣伝効果になります。

また、スタジアムやドームの場合、テレビやインターネットなどで企業の名前が入った施設名が連呼されるため、さらに宣伝効果が高いことになります。テレビ画面上で「開催場所は○○ドーム」と表示され、アナウンサーが「○○ドームで行われています」と話すたびに、意図的ではない、さりげない宣伝効果をアピールすることができるでしょう。

また、ネーミングライツを検討している公共施設の多くが、施設を運営するための資金難にあえいでいるケースが多いです。そこに参入することにより、「地域貢献」をしたと捉えられ、企業のイメージアップにつながることにもなります。

維持費軽減

そして、ネーミングライツを導入した自治体のメリットとしては「維持費軽減」があげられます。

大型スタジアムやドームの場合、世界的な大会が開催されるような施設もあります。それにふさわしい設備の導入や施設維持のためには、年間数千万円以上掛かることもあり、自治体だけの努力では資金が足りないケースも多いのです。その点、ネーミングライツを導入することにより、企業側が大きなスポンサーとなり経費を負担してくれるため、自治体の負担は軽くなります。

企業側の負担額は施設によって違いがありますが、大型スタジアムやドームの場合、5年契約で10億円といった契約が多いです。この数字を見るだけでも、ネーミングライツによりいかに自治体の負担が減っているかが分かります。

ちなみに、アメリカで行われているネーミングライツでは「新規施設建設時の費用確保」を目的としたことが多いのですが、日本の場合は既存施設の維持費確保が大きな目的となっています。

ネーミングライツの施設例

ではここで、日本国内におけるネーミングライツの施設例を見ていきましょう。

フクダ電子アリーナ

「フクダ電子アリーナ」は、千葉市中央区にあるフットボール専用の球技場です。以前は「千葉市蘇我球技場」という名前でしたが、フクダ電子が命名権を取得し、フクダ電子アリーナという名称になりました。地元の住民からは「フクアリ」と呼ばれており、ネーミングライツを導入してからの方が名前を覚えやすくなったと好評です。

NACK5スタジアム大宮

「NACK5スタジアム大宮」は、大宮アルディージャがホームスタジアムとして使用している「大宮公園サッカー場」のネーミングライツです。一度契約が切れたものの、ラジオ局の「エフエムナックファイブ」が更新し、2021年まで継続されることになりました。

スカイマークスタジアム

「スカイマークスタジアム」は神戸総合運動公園にあるグリーンスタジアム神戸が、ネーミングライツを導入したことにより名称が変わったスタジアムです。2005年からこの名称になりましたが、知名度がアップしたとしてスカイマーク社は継続更新をせず、新たな売却先を探す事態となりました。現在はお弁当で有名な「ほっともっとフィールド神戸」として存在しています。

楽天生命パーク宮城

「クリネックススタジアム宮城」は、過去に3度も名称が変わっているめずらしいネーミングライツ施設です。2005年に人材会社である「フルキャスト」が命名権を取得したものの、違法行為の発覚により契約解除となっています。その後2007年に「日本製紙クリネックススタジアム宮城」と名称が変更されたものの、こちらも問題行為が発覚し、ネーミングライツの契約解除。その後クリネックススタジアム宮城となりましたが、現在では「楽天生命パーク宮城」の名称として落ち着いています。

大企業だけとは限らない

大型ドームやスタジアムなどの例から、ネーミングライツは大企業でないと難しいと思われがちですが、公共施設の規模は大小それぞれあります。そのため、ネーミングライツに参戦するのは何も大企業だけではありません。

例えば、Jリーグのホームグラウンドの命名権を欲しがる中小企業は多く、理由としてはテレビ放送などで企業名を呼ばれることで「高い知名度」をあげることができるからです。大規模なグラウンドがホームになっている場合は契約料が高いですが、フットボール専用競技場といった施設の場合、中小企業でもネーミングライツに参戦できるチャンスは高いです。

また、施設に限らず「公共トイレ」などの設備でもネーミングライツが行われていることがあります。例えば、京都の清水寺境内にある公衆トイレは、「はんなりトイレ」と命名され、トイレメーカーで有名な「TOTO」がネーミングライツを導入しました。この場合年間の契約金は10万円であり、比較的コストも安いことから、清掃会社を中心とした小規模な会社も公共トイレのネーミングライツに参戦しています。

このように、ネーミングライツは大規模企業だけの特権ではなく、企業の特性を活かした施設を獲得するのが重要となっています。

引用:【京都市ホームページ】公衆トイレのネーミングライツ事業 http://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000203078.html

自治体も企業もネーミングライツでwin-win

現在では多くの公共施設でネーミングライツを見かけることもありますが、日本で導入された当初は反対意見も多くありました。

それまでの「○○市民球場」といった名前から、「○○グループホームスタジアム」といったくだけたネーミングになってしまうと、イメージダウンになるという意見が多かったためです。しかし、名前を変えずに施設を維持していくのは自治体にとって難しく、結果的に税金を投入し、市民の負担になってしまうこともありました。

そこで、ネーミングライツを導入することは、自治体の負担を減らし、企業側にとっても宣伝効果を高めイメージアップを図れることから、両社にとって大きなメリットがあります。これからは大型施設だけでなく、公共トイレなどの小さな施設もネーミングライツは増えていくことでしょう。

多くの公共施設や設備が快適に使えるよう、ネーミングライツのさらなる発展に期待しましょう。

 

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