自治体営業を成功させるには?知っておくべき5つのコツ

なぜ自治体営業は難しいと感じるのか?
はじめに
「時間をかけて提案を作り、ようやくアポイントを取ったのに、いつも『検討しておきます』の一言で終わってしまう」「熱心に提案しても反応が薄い」「そもそも誰に話を通せばいいのか分からない」
そんな手応えのなさに「自分のやり方が悪いのか、それとも自治体とはこういうものなのか」と、疑問やもどかしさを感じている営業担当者は少なくありません。この成果の出にくさの根本には、民間企業と自治体との間にある構造的な違いが存在しています。これは、民間企業とは事業の進め方、予算や調達に関する判断の仕組み、評価される提案の切り口が全く異なるためです。この違いを理解しないまま、民間営業の常識でアプローチを続ければ、時間と労力が空回りする結果は避けられません。
本記事では、自治体営業を成功させるために、知っておくべき5つのコツを解説します。自社の営業スタイルが自治体の求めるニーズに合っているのか、ズレている場合はそのズレを認識し、自治体に響く提案へのヒントとなれば幸いです。
この記事でわかること
自治体営業を成功に導く5つのコツ

自治体営業が難航する背景には、民間企業とは異なる特有の文化やルールが存在します。ここでは、自治体営業を成功に導く5つのコツを解説します。
自治体営業を成功に導くコツ1.自治体職員の意思決定プロセスを理解しよう
民間企業では、社長や役員など特定の決裁権者一人の承認で物事がスピーディに進むことがあります。しかし、自治体の意思決定プロセスは根本的に異なります。基本となるのは「関係部署の横並び合意」です。
一つの事業を進めるためには、まず事業担当部署内での合意が必要になります。さらに、その事業に関連する他の課や、最終的には予算を管理する財政部門、契約を担当する部門などの承認が不可欠です。担当者が提案内容を気に入っても、これら関係部署の誰か一人でも「ノー」と言えば、計画は頓挫する可能性があります。
つまり、目の前の担当者との交渉は、ゴールではなくスタートラインに過ぎません。その担当者が、他の部署や上司をどう説得するのか、そのための材料(客観的なデータ、導入による費用対効果、他の自治体での実績など)を十分に提供できるかが、民間企業側の腕の見せ所、成功のコツです。提案の裏側で、誰が、どのような基準で判断を下しているのか。意思決定のプロセスを読み解く力が求められます。
自治体営業を成功に導くコツ2.自治体の予算サイクルを理解しよう
どんなに優れた提案であっても、タイミングを外せば決して採用されません。それが自治体営業の鉄則、コツです。自治体の事業はすべて予算に基づいて執行されており、その予算編成のサイクルを理解することが絶対条件となります。(自治体の予算の仕組みとスケジュールについては下記コラム参照)
自治体の予算には、大きく分けて「当初予算」と「補正予算」の2種類があります。
- 当初予算
新年度(4月)から1年間の活動計画に基づいて編成される最も大きな予算です。この予算に組み込んでもらうためには、前年度の夏頃(6月〜10月頃)までには提案活動を終え、担当部署に事業の必要性を認識させておく必要があります。
(参考)予算スケジュール

- 補正予算
年度途中に発生した突発的な事態(災害対応、国の緊急経済対策への対応など)や、当初予算とのズレを修正するために編成される予算です。原則3の倍数月(6月、9月、12月、3月)に組まれます。例えば、国の新たな交付金が発表された6月〜7月頃に、その活用策として提案を持ち込むといったスピード感が求められます。
事業化を目指す年度の、前年の初夏から秋にかけてが勝負の時期となります。このタイミングを逃して年度末に提案しても「来年度の予算はもう固まったので」と断られるのが関の山です。当初予算と補正予算、どちらの予算獲得を狙うのかを見極め、提案の期限から逆算した営業戦略が不可欠です。
自治体営業を成功に導くコツ3.ターゲットの“担当者”を見極めよう
自治体営業でよくある失敗が、アプローチする相手を間違えることです。例えば、窓口となる部署の担当係や一般の職員に熱心に製品を説明しても、それが直接的な案件化につながるケースは稀です。彼らは日々の業務の実行者であり、多くの場合、新規事業や予算を伴う調達の決定権を持っていません。
各事業部署において、「係長級以上」の役職者が鍵を握っている場合があります。係長や課長は、担当部署の予算要求や事業計画の策定に責任を持っていることが多いです。そのため、現場の担当者から「良い提案だ」と評価されても、その上司である係長や課長が「必要ない」と判断すれば、そこで話は終わってしまう可能性も考えられます。事業の方向性を描き、予算を動かす権限を持つ人物へのアプローチが、自治体営業成功のコツといえるでしょう。(自治体職員の役職については下記コラム参照)
また、真のキーパーソンは別の場所にいることも考えられます。その一つが「企画政策部門」の職員です。彼らは自治体全体の総合計画や重要施策の策定に関与しており、各部署の事業を横断的に把握していることがあります。ここに自社の提案が自治体全体の課題解決にどう貢献できるかを提示できれば、トップダウンに近い形で話が進むことが期待できます。
自治体営業を成功に導くコツ4.課題に寄り添った”提案内容”を組み立てよう
「この製品はこんなに高機能です」「弊社の技術は業界一です」。このような、自社製品の優位性を一方的にアピールするだけのプロダクトアウト型の提案は自治体には響きにくいでしょう。自治体職員が求めているのは、自らが向き合う「行政課題」を解決するための具体的なソリューションだからです。
彼らが日々向き合っているのは、限られた人員でも安定的に住民サービスを提供できる行政運営体制の構築、激甚化する自然災害への備え、深刻化する少子高齢化への対応、地域経済の活性化といった、極めて公共性の高い課題です。自社のサービスや製品がこれらの政策課題とどう結びつき、住民サービスの向上にどう貢献できるのか。その文脈で語られて初めて提案は聞く耳を持ってもらえるのです。
自治体職員は目に見えた課題に興味や関心を示しやすい傾向にあり、この部分には営業もしやすいです。しかし、より重要になるのが「潜在的な課題」へのアプローチです。職員が課題として感じていなかったり、感じていても優先順位が低くなっていたりする部分を、いかにして「自分ごと」として捉えてもらえるようにするかが重要になります。その為には、具体的な事例を多用し、自分ごととして捉えてもらう提案が欠かせません。
こうした提案を行う上では、営業のスタンスそのものも重要になります。自治体職員は、民間企業で一般的な「営業される」ことに慣れていない方が多いです。そのため、押し売り営業や決断を急がせるようなコミュニケーションは、かえって警戒心や不信感を生む原因になりかねません。
効果的なのは、営業というよりも「情報提供」や「課題に関する相談」というスタンスでアプローチすることが成功のコツです。そのためにも、提案前にはその自治体の「総合計画」や個別の部門が公表している事業計画に必ず目を通しましょう。そこに書かれている言葉こそが、自治体が解決したいと公式に表明している課題です。その課題と自社の強みを接続し、「〇〇という課題解決のために、弊社の△△がお役に立てます」というマーケットインの発想で提案を組み立てる必要があります。(自治体への提案書のポイントについては下記コラム参照)
自治体営業を成功に導くコツ5. まずは自治体に対する実績をつくり、活用しよう
5-1. 小さい案件から実績を積み上げよう
多くの自治体は、調達において「他自治体への導入実績」を重視する傾向にあります。前例のない新しい製品やサービスを導入することには非常に慎重なため、最初から大規模な事業や高額な契約を獲得しようとすると、実績がないことを理由に弾かれてしまうことも少なくありません。
ここで必要になるのが、「まずは小さな案件でも足掛かりにする」という戦略的な視点をもつことです。自治体との取引には、競争入札だけでなく、より参入しやすい突破口が存在します。新しい技術やサービスを試験的に導入してもらう実証実験も、その一つです。競争入札を経ずに特定の事業者と契約できる随意契約や、部署単位で利用できる安価なツール、単発の研修事業といった小規模案件も、最初の突破口として有効です。
また、多くの自治体は隣近所の自治体の動向を気にしています。そのため、ターゲットにしている自治体の近隣自治体で実績を作ることも、有効な戦略の一つです。もし、狙っている自治体がベンチマークしている自治体が分かり、そこで実績を作ることができれば一つの突破口となるでしょう。
一度でもその自治体との取引実績ができれば、それは「信頼の証」となります。その小さな実績をテコにして、より大きな事業へと展開していくのです。
作った実績は、きちんと相手に伝わる形で示すことも重要です。最初の一歩をいかにして作るか、その実績をどう見せていくか。そのための現実的な突破口を見つける視点が成功のコツとなります。
5-2. 自治体からの受注方法の種類
自治体からの受注には、いくつかの方法があります。それぞれ特徴が異なるため、自社の規模やサービスに合った方法を理解しておくことが重要です。主な方法は以下の通りです。
- 入札
入札は、自治体が公正・透明な取引を行うために用意した公募制度です。一般競争入札や指名競争入札などがあり、金額や案件の規模によって使い分けられます。競争性が高く、条件が明確なのが特徴です。(自治体の入札については下記コラム参照)
- 随意契約
随意契約は、少額案件や競争が不適当な場合に使われる契約形態です。入札に比べて手続きが簡略で、特定の企業と契約しやすいという特徴があります。(随意契約について、詳しくは下記セミナー参照)
参考:オンデマンド配信
「今年度の自治体案件を獲得するために
少額随意契約の基準額改定
自治体営業への影響を解説!」
随意契約について、その種類と、地方自治法施行令の2025年5月改正による少額随意契約の基準額変更について解説しています。
- 包括連携協定
包括連携協定は、自治体と企業が中長期的に協力する枠組みです。複数年度にわたる案件を進めやすく、自治体との関係を深めながら実績を積むことができます。(自治体との包括連携協定については下記コラム参照)
- 実証実験
実証実験は、新しいサービスや技術を自治体で試すトライアル的な導入です。小規模で始めやすく、成功すればその後の本格的な受注につなげることができます。実績作りとしても活用しやすい方法です。
「誰に・いつ・どう動くか」自治体営業のスケジュールと流れ

これまでの5つのポイントを踏まえ、具体的な営業活動の設計方法について解説します。成功の鍵は、自治体の年間スケジュールを理解し、そこから逆算して戦略を立てることにあります。
年間予算スケジュールに沿って営業活動を設計する
自治体営業は、闇雲なアプローチでは成果に繋がりません。自治体の予算状況に合わせたアプローチが重要です。ここでは案件獲得の代表的な3つのパターンと、それぞれの状況に応じた営業活動の設計方法について解説します。
(参考)予算スケジュールと営業スケジュール

(1) 予算は組まれているが、発注企業は決まっていない場合のスケジュール
自治体との契約期間は基本的に単年度です。そのため、既に競合サービスが導入されている自治体でも、次年度の契約業者が決まっていないケースはよくあります。もし現在導入されているサービスよりも価格や機能面で自社に強みがあれば、次年度契約に切り替わる可能性があります。
まずは各自治体の入札時期に合わせたアプローチを行いましょう。例年、他社と随意契約を行っているようであれば、公募にしてもらうよう働きかける動きも効果的です。
(2) 予算は組まれているが、違う用途で使用する場合のスケジュール
難易度は非常に高いですが、緊急性の高い案件などの場合、時期に限らず予算の種類を入れ替えて対応してもらえる可能性があります。
例えば、住民への連絡手段として紙の通知にかかる予算(通信運搬費など)を取っていた場合に、「紙ではなくSMSで情報発信しませんか?」という形で提案を行い、紙で取っていた分の予算を使用してもらう、といった動きです。これは「流用」と呼ばれ、既存の予算を活用する一つのテクニックです。
(3) 予算を取っていない場合のスケジュール
過去に自治体内での取り組み実績がない新規事業に関するサービスなど、先進的な取り組みを提案する場合、自治体側で事前にその分野の予算を取っていない可能性が高くなります。その場合は、提案の時期によって「当年度の予算獲得」を目指すか、「翌年度以降の予算獲得」を目指すかの2つの動きに分類されます。
<当年度予算(補正予算など)獲得に向けた動き>
国の交付金が交付されるタイミングや、9月・12月の自治体補正予算の獲得を狙い、6月ごろから自社サービスのPRや無料トライアルを実施します。話が前に進みそうな場合は積極的に起案文書や仕様書、要領案の作成を補助することで、自治体担当者が話を進めやすくなります。
<翌年度予算獲得に向けた動き>
8月ごろに各省庁の概算要求、9月ごろに各市町村の予算編成方針が公表されます。それまでに自社サービスのPRや無料トライアルを実施しておきましょう。
自治体によっては「サマーレビュー(予算編成前の事前検討)」という時期を設けている場合があります。これは通常の6月~10月の予算編成とは違い、6月~8月の早い段階である程度の項目を決めてしまうものです。このサマーレビューに項目を入れてもらえないと、後から追加する難易度が非常に高くなるため、5月ごろから動き出すのが望ましいでしょう。
<4月以降に向けた動き>
次年度予算がほぼ確定する1月以降は、新たに予算を獲得することが時期的に難しくなります。
ただし、3月は人事異動が確定する時期でもあり、早い自治体では3月から翌々年度の情報収集を始める担当者も少なくありません。4月以降、こうした担当者に向けて情報提供や情報発信といった「種まき」の動きをしておくことで、将来的な案件獲得に繋がる可能性があります。
成功事例から学ぶ自治体営業のコツ

自治体営業では、成功事例から学ぶことが多くあります。
ここで紹介する事例は、マーケター向けの内容ではありますが、自治体営業担当者にも応用できるコツが詰まっています。(自治体営業の成功事例の詳細については下記「お客さまの声」参照)
この事例のポイント
- 成功に導くコツ2:自治体の予算サイクルを理解し、プロモーションのタイミングを押さえている
この事例では、継続したプロモーションを実施した上で、第二次補正予算と年度末の予算消化の時期を狙ったプロモーションを実施。
予算サイクルを理解したタイミングでのプロモーションを実施したことが反響につながった。
- 成功に導くコツ5:他自治体での導入実績を活用する
自社サービス紹介だけでは反応が薄く、他自治体での導入事例を提示する方針に転換。
自治体職員にとって「自分の自治体でも活用できる」とイメージしやすくなった。
自治体営業に役立つFAQ

Q:自治体営業が民間営業より難しいと感じるのはなぜですか?
A:自治体は意思決定プロセスが慎重で、複数部署や担当者が関わります。また、予算や年度計画に縛られることも多く、民間営業とは進め方が異なります。自治体営業のコツは、担当者を見極め、営業のタイミングを意識することです。
Q:自治体営業にはどんな方法がありますか?
A:自治体営業で一般的に使われる手法には、以下があります。
- アポイント取得による直接面談:
担当者と直接話すことで、自治体の課題やニーズを詳細にヒアリングできます。関係構築がしやすく、提案の精度も高まります。 - テレマーケティング(電話営業):
担当者や窓口に直接連絡し、情報提供や面談アポイントを設定するのに有効です。 - DM・FAX・メールでの案内送付:
面談の前段階として、興味を引く情報提供や資料送付に活用できます。 - 展示会・セミナー・オンライン説明会:
関心の高い自治体担当者と接触できる場として有効です。 - メディア掲載の活用:
信頼性を補強し、提案の説得力を高めます。
株式会社ジチタイワークスでは、これまで培ってきた自治体ノウハウ・ネットワークのもと、自治体向けプロモーションサービスをご提供しています。自社に合う自治体へのアプローチ方法がわからない、自治体営業をしているが思うように上手くいかないなど、自治体営業にお困り事がありましたら、いつでもご連絡ください。
Q:営業のタイミングやスケジュールはどう設定すればいいですか?
A:年度予算や補正予算など、自治体の予算サイクルに合わせて提案することが重要です。
翌年度予算を獲得する場合、前年度の夏〜秋頃までには自社サービスを提案しておく必要があります。一方で、年度途中でも補正予算や交付金のタイミングに合わせて提案を行うことで、採択につながるケースもあります。自治体営業では、提案内容だけでなく、営業タイミングの設計が成果に直結します。
関係者との調整や承認フローも把握しておくと、案件化までの期間を短縮できます。タイミングを押さえることが、自治体営業成功の大きなコツです。
まとめ|自治体営業で成功するには?

自治体営業で成果を出すための第一歩は、民間企業との営業スタイルの「ズレ」に気づくことです。民間企業では王道とされてきた営業の手法が、自治体の論理では通用しないということを認識する必要があります。
その上で重要なのは戦略的な思考です。誰に(ターゲット)、いつ(タイミング)、どんな提案を(内容・手法)すべきか。自治体の予算サイクルや意思決定プロセスを深く理解し、そこから逆算して、緻密な筋道を立てること。それが、成果の出にくい自治体営業を成功へと導いてくれるでしょう。本記事で紹介した5つのコツを、ぜひ自社の状況に当てはめてみてください。
株式会社ジチタイワークスでは、これまで培ってきた自治体ノウハウ・ネットワークのもと、自治体向けプロモーションサービスをご提供しています。自社に合う自治体へのアプローチ方法がわからない、自治体営業をしているが思うように上手くいかないなど、自治体営業にお困り事がありましたら、いつでもご連絡ください。
この記事を書いた人:自治体クリップ編集部
ジチタイワークスが運営する企業向けメディア『自治体クリップ』の編集部です。予算制度や提案の進め方など、企業が自治体との連携するうえで役に立つ情報を分かりやすくお届けします。
